中国民営企業の“したたかさ”を評価しよう!

 1,000億元を投じるといっても、寄付するわけではありません。1,000億元を使って“政策に沿ってビジネスを行います”と宣言したのです。

 テンセントも1,000億元を拠出すると発言しています。美団も積極的に協力すると発言しています。

 華為技術は、米国から半導体の供給を止められても、次世代通信規格6G技術の開発を加速させ、新エネルギー自動車に活路を求め、たくましく生き抜こうとしています。

 転んでもただでは起きないのが、中国民営企業です。

 今月の注目セクターは株価の下がった主力ハイテク銘柄を中心にピックアップしました。ネガティブな材料ばかりが目立ちますが、多くの投資家は、いわゆる国家資本主義の強化による需要創出効果を見逃しています。中国民営企業の“したたかさ”を評価してください。

注目の中国株1:テンセント(00700)

 中国を代表するインターネット・メディア・サービス企業です。ネットゲームのほか、コミュニケーションアプリ(微信、QQ)や、音楽、映像、ニュースなどを提供するSNS(交流サイト)などをプラットフォームとして各種サービスを展開しています。

 部門別売上高(2021年6月中間期)ではネットゲームが32%、ネット映像、音楽などのデジタルコンテンツ、ゲーム用AR機器が21%、オンライン広告が16%、コード支払い(微信支付)による決済、クラウド業務などが30%、その他が1%です。

 2021年6月中間期業績は23%増収、46%増益でした。当局の規制強化による影響でネットゲームや、オンライン映像、音楽などのデジタルコンテンツの伸びは鈍化しましたが、決済、クラウド業務が好調でした。

 当局は18歳以下の青少年に対するゲーム利用を厳しく制限しており、テンセントをはじめ、ゲーム、デジタルコンテンツ業界全体に対して法律の厳守を求めています。

 大方針として共同富裕の推進が示されていて、その影響も懸念され、株価は軟調に推移しています。

 こうした中でテンセントは8月18日、「共同富裕専門プロジェクト計画」を発表、合計1,000億元(1兆7,000億円)の資金を投入し、郷村振興と自身の持つデジタルハイテク技術を深く結合させ、低所得グループの収入を増やし、基礎医療システムを改善し、均衡のとれた教育の発展を促すなど、民生領域で当局に協力すると発表しました。

 いかに利益率の高いビジネスを掘り起こせるかが焦点となりそうですが、とりあえず、当局との関係は改善に向かいそうです。

 テンセントは総資産の6割弱が企業などへの投資勘定です。ナンバー2の劉総裁は2020年1月、「投資先は800社を超え、70社以上の上場企業、160社以上の市場価値が10億ドルを超えるユニコーンに投資している」と発言しています。これらの投資が将来、収益の柱となり、業績をけん引すると予想します。