投資家は、財務とつながる非財務情報に関心

 近年、企業分析に占める「非財務情報」【注】の重要性がきわめて高くなっています。

【注】非財務情報
 上場企業が開示する情報に、財務情報と非財務情報があります。財務情報とは、会社の財政状況・経営成績等を表すものです。代表的なものに、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー表(以上を財務3表といいます)があります。
 非財務情報とは、それ以外の情報で企業の価値変動に影響するものを言います。具体的には、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスにかかる情報、従業員に関する情報などが含まれます。ESGも、非財務の重要情報となりつつあります。

 ただし、投資家は、非財務情報なら何でも関心を示す、というわけではありません。投資家が関心を示すのは、以下2種類の非財務情報に限られます。

【1】近い将来、財務に影響を与える非財務情報
【2】遠い将来、財務に大きな影響を与える非財務情報

 財務に影響が及べば、株価にも影響します。つまり言い方を変えると、投資家は、短期的または長期的に株価に影響を及ぼす非財務情報にだけ、興味を示すようになったのです。

 短期的にも長期的にも財務・株価にほとんど影響を与えない非財務情報には、投資家は関心を示しません。

 それでは、ESG情報についてはどうでしょう? ここまで、ESGとひとくくりに話していましたが、実はEとSとGで、財務に与える影響は異なります。

 近年の傾向でいうと、日本の機関投資家は、E(環境経営)とG(ガバナンス)を明確に重視しています。ともに、財務に与える影響が大きいからです。

 S(社会的責任)については、評価が分かれます。社会貢献活動が、企業の社会との共生に役立ち、長期的な企業価値を高めるという見方と、社会的コストを支払っているだけで、それ自体が企業価値を高めるわけではないとの見方が対立しています。

 私は、Sについては短期的に財務に大きな影響を及ぼすことが少ないので影響が見えにくいだけで、長期的には大きな影響を及ぼす可能性が高いと考えています。