FIRE前と後、リスクテイクを同一にする人が多いが、本質的にはおかしい

 自分がどれくらいリスクを取ってもいいか、判断することは投資計画においては重要な要素です。リスクを過剰に取ったものの、下振れが大きく発生した場合、回復の余地がないというのでは困るからです。

 企業年金運用(確定給付企業年金など)では、一般に成熟度という概念をリスク許容度の判断指標として用います。企業全体としては活動が継続していくものの、年金受給者の数が増えていくと「現役社員8,000人:年金受給者300人」のようなところから「現役社員1万人:年金受給者5,000人」「現役社員1万人:年金受給者1万2,000人」のように逆転していきます。

 これは「確実な支出(年金支払い)」が生じることを意識する必要があるわけで、一般的には運用のリスクを高く取ることを控えるようになります。

 よく個人の運用でも「若いうちはリスクが取れる」といいますが、似たようなことを企業年金でもやっているわけです。

 さて、個人のFIRE実行「後」の運用は新規の追加拠出はストップし、取り崩しのみを行うことになります。下落相場でも取り崩しは必要で、下落相場に新規投資資金を追加することはできなくなります。

 普通に考えれば、FIRE「後」はリスク許容度が低くなり、投資のリスクを落としていくべきといえます。

 わが国におけるFIRE達成者の多くは「リスクが好き」というタイプだと思われます。積極的なリスク資産運用を行い、高利回りを獲得し早期リタイア生活に入ってきた経験がありますし、むしろリタイアすると自由な時間は増大しますから、ますます投資を継続したくなります。

 ある意味、リタイア後の趣味や生きがいの一部として資産運用が継続される感じです。これはこれで悪い話ではないのですが、これからFIREを目指していく「普通の人」にとっては高すぎるリスクであることを、FIREチャレンジャーは意識しておくべきだと思います。