人間関係が幸せに影響する
さて、お金があれば自由の範囲が拡大する。例えば、個人でもお金があれば、宇宙旅行を体験できるような世の中になった。
しかし、宇宙旅行それ自体が本人にとってかけがえない経験であるとしても、人は、宇宙旅行に行った自分を他人に感心して承認して貰いたい生き物でもある。
端的に言って、人間は、自分に関して他人による承認を得たことを実感して「幸せ」を感じる。いくらお金があって自由の範囲が広くても、友達も恋人もいないような人生では面白くないし、幸せを実感することが難しい。
必ずしも異性関係の「モテる・モテない」ではなくもう少し広い人間関係を指すことにするが、「モテる」人は幸せだし、「モテない」人は不幸せだ。「お金」、「自由」の外に、「人間関係」の要素が幸福には影響するということだ。図解すると、図6のような3次元になる。
(図6)第3の要素としての「他人の評価(≒モテ)」
他人を眺めて推測するに、人気のある人(モテる人)は、富裕であるか否かを問わずに幸せそうに見える。他方、人気のない人(モテない人)は、豊かであったり仕事の実力があったりしても、何やら不満そうで、素直に幸せではないように見える。
自分に引きつけて考えてみるとしても、「人間関係の全てを失う」状態と、「金融資産の全てを失う」状態とを想像上で比較すると、前者の方が圧倒的に嫌だ。これは、筆者がたいしたお金を持っていないからなのかも知れないが、多くの読者がこのように感じるのではないかと想像する。
さて、他人からの承認、即ち「人気(≒モテ)」は、どの程度お金で手に入れられるものなのだろうか。
様々な人間関係に付随するイベントにはお金が関係するので、お金で「人気≒モテ」を買える面はある。しかし、例えば、超富裕な個人が巨額のお金を使うと近い将来「初めて月に到達した民間人」のような立場を手に入れられるかも知れないが、この人が「世界一モテる人!」になるのは無理だろう。
おそらく次のようなことが言えそうだ。
- お金は「人気(≒モテ)」を買うにも有効だが、「自由(にやりたいこと)」を買う場合ほど有効ではない。
- 人気者(≒モテる人)はお金を稼ぎやすく、不人気な人(≒モテない人)はお金を稼ぎにくい。
この関係を図にしてみたのが、図7だ。
(図7)人気(≒モテ)とお金の関係
人気(≒モテ)には、たぶん稼ぐ能力と同じかそれ以上に、元々の資質の個人差が大きいだろうが、「人柄を良くする」などの努力で改善ができない訳ではない。
「幸福」を構成するのが「自由」と「人気」だとして(図8参照)、「お金」は両者を手に入れるに当たってポジティブな影響力を持つ要素だ。加えて、お金を得る近道についても考えると、他人に好かれること(人気者になること)が、直接的な幸福感の獲得にも、お金を通じた間接的な幸福感の獲得にも有効であるようだ。
(図8)「自由」と「人気」と「幸福感」
「幸せになるには、他人に好かれるような人になるのが近道だ」という平凡な結論が出た。