「お金」と「時間の使い方」のトレードオフ

 さて、前記の話は、お金を稼ぐ効率に関する比較だが、「お金」自体は「幸福」を生み出すための「手段」に過ぎない。一方、お金を稼ぐためには、しばしば自由な時間を犠牲にするような「幸福の犠牲」を伴う。

 一般に、自分の行動を自分で決めることができる「自己決定性」は幸福を増進するとされる。日々の時間の「自由度≒幸福度」とお金を稼ぐか使うかの「収益性」の関係を図2に整理してみた。

(図2)収益性と自由・不自由による時間の幸福度の分類

出所:筆者作成

 例えば、この図の第1象限にあるような、自分にとって張り合いがあって楽しい行動が自分の仕事であり、自分に収入をもたらすような状況を作り出すことができると、人はかなり幸せだろう。雑な比較で恐縮だが、「やることのないFIRE」状況の人よりも幸せではないだろうか。この第1象限の時間を生み出すことが、言わば「人生勝利の戦略」にちがいない。

 もっとも、仕事というものが楽しいばかりのものでないのは、多くの人が実感するところだろう。我慢して働き、しかしお金を稼ぐことができる第2象限の領域で多くの人が働いている。そして、お金を使って楽しい時間を買う第4象限の領域との間を行き来するのが、普通の暮らしであるかも知れない。

 もちろん、不自由でしかも損をするような第3象限の状況は避けたいと誰しも思う。