9月に注目したい新興株の動き

 尋常ではない需給悪化で、1,000ポイントの節目を割れたマザーズ指数。ただ、ここでアク抜けし、ひさびさの自律反発を果たしました。

 指数もかなり戻しましたが、個別株でも「こんな上がったの!」と驚くほどのリバウンド銘柄が続出。一安心ではありますが、今後の新興株市場に楽観できるとも思えず、あくまで一安心程度?

 というのが、同じことが3カ月前にも起きているからです。3カ月前の安値を付けた5月も(この8月も)、反転ポイントは「決算発表ラッシュを通過後」でした。

 決算発表ラッシュに向けて、下げが下げを呼ぶ、売りが売りを呼ぶ格好でローソク足でいう“陰線”連発で崩れました。完全に需給で崩れたわけですが、底入れ時も底入れ後も「売買代金が増えていない」のが特徴。

 教科書的には、底入れ時はセリングクライマックス(損失に耐えられずロスカット、価格破壊を起こしたところでの押し目買いが大量にぶつかり合い、株主がごろっと入れ替わる現象)になり、出来高が急増すると言われます。

 それが、3カ月前も、そして今回も起きていません。気付いたら下げ止まり、気付いたら戻していた…そんな感じ。

 このパターンでは、一定量のロスカットが進んで安値圏での売りは減っている一方で、安値圏で買った投資家も短期の投資家である可能性が高いといえます。

 とくに、マザーズでいえば、中小型グロース系のアクティブファンドのような機関投資家が安値圏で買っている感じはありません。

 つまり、短期の個人の売りを短期の個人の買いで吸収した可能性が高く、また下がり始めると、同じことが起きるということです。実際、3カ月前で起きたことが3カ月後の8月に起きたわけで…。

 ある程度は戻しても、前回高値までは戻せない…そうこうしているうちに、3カ月に1回訪れる四半期決算の集中シーズン(次は11月)が訪れるという展開は考えておくべきだと思います。

 決算発表でいえば9月は少ないですが、10日にセルソース、13日にビジョナル、14日にプレミアアンチエイジング、スマレジ、サンバイオなどが予定。流動性ではマザーズトップ級のプレミアアンチエイジングは本決算ですので、内容と株価反応には注目されます。

 9月はIPOも比較的多く、これも「IPO以外のマザーズ銘柄の流動性を奪う」という意味でマイナスでしょうか。下がり始めれば、バリュエーションが高いとか、少し整理されたとはいえ信用買い残が多いとか、難癖を付けられながら地合いを悪くするのがマザーズ市場。

 9月は、菅総理の退陣意向を受け、政権刷新を期待していた投資家が多いのか“変化は買い”的な強い初動を示しています。

 自民党総裁選が不透明感を増していますが、急激に日経平均が上がり始めた中、たまっていた日経平均ショートのポジションが買い戻しを迫られる「踏み上げ相場」の雰囲気が強まっています。

 日経平均がグイグイ上がるなら、マザーズなど新興株市場にもマイナスでは無いはず。ただし、日経平均上昇の理由が買い戻しという需給要因だとすれば、マザーズには買い戻し要素がほぼ皆無。

 日経平均がグイグイ上がるなか、マザーズは全然上がらないという昨年11月~今年1月に起きた展開を有力シナリオと考えます。