半年後の北京冬季五輪、マーケットへの不安要素

不安要素1:新型コロナの感染状況

 今後の展開ですが、東京五輪が閉幕した今、新華社の報道にもあるように、中国は「次は北京冬季五輪だ」という姿勢で、挙国一致で半年後の五輪に挑むでしょう。北京冬季五輪が中国経済やマーケットにどれだけの恩恵をもたらすかは、今回の東京五輪同様、依然不確定です。中国でも新型コロナデルタ変異株が流行し始めています。厳格に敷かれている入国規制は来年2月まで続くことは必至でしょう。少なくとも、通常の五輪開催時のような経済効果は見込めません。無観客になる、あるいは観客の出入りを制限する可能性も十分にあります。やはり、中国内外のコロナ次第だと言えるでしょう。

不安要素2:新疆ウイグル問題などをめぐる中国と西側諸国との関係悪化

 もう一つ、マーケットへの不安要素としては、国際関係が挙げられます。上記のボイコット問題です。王毅外相のコメントを踏襲するものですが、7月20日、中国外交部の趙立堅(ジャオ・リージェン)報道官が記者会見にて、「相互に支持し、五輪開催を成功させることは、中日両国の指導者間における重要な合意事項である」と主張し、中国として日本側の五輪開催を支持していく立場を表明しています。裏を返せば、中国が北京冬季五輪を開催するに際しては、しっかり支持するようにという外交的圧力をかけているということです。

 仮に日本が今後、新疆ウイグル、香港問題などで、欧米と歩調を合わせながら中国をけん制、批判、制裁するようになり、北京冬季五輪への影響も免れないような事態になれば、中国は日本を激しく非難し、日中関係は悪化するでしょう。日中ビジネスへの影響は必至ですし、中国の消費者の日本企業、商品への不買運動なども起こるかもしれません。これからの半年間、中国と米欧日との地政学的関係には緊張が続くでしょう。その都度マーケットを揺さぶっていくのは必至ですから、注意してみていく必要があります。本連載でも随時報告していきます。

不安要素3:中国とIOCとの関係

 最後に、北京五輪を開催する上で、中国共産党として最も取り込んでおきたいのはやはりIOC、特にバッハ会長です。日本でも物議を醸しましたが、7月13日、同会長が東京都内で橋本聖子JOC(日本オリンピック委員会)会長と面会した際に、「最も大事なのはチャイニーズピープル」と言い間違えたように、中国が相当程度バッハ会長と意思疎通を図り、五輪を円満に成功させようとしているのかが見て取れます。

 中国としては、西側諸国との関係が悪化しても、北京五輪の開催に支障が出ないように、バッハ会長をグリップし続けようとするでしょう。裏を返せば、IOCが中国の問題行動や西側との関係悪化に「加担」しているという構造ですから、不安要素と言わざるを得ません。

 一方で、仮に、バッハ会長率いるIOCが、西側諸国を中心とした国際社会の要望や主張を真剣に受け止め、重い腰を上げ、新疆ウイグルや香港における人権を重んじるべきだ、南シナ海や台湾海峡においても自制的な政策を取るべきだ、国内における自由を拡大していくべきだといった点を、五輪開催にあたり中国共産党指導部に要請し、結果、中国の国内外における政策や言動が自制的、温和的なものになれば、マーケットへの好材料と化すでしょう。この意味で、各国政府は、中国が現在置かれたこのような状況を踏まえて、IOCと連携しつつ、バッハ会長に健全な圧力をかけることで、「平和」な世の中を創造していくべきだと考えます。