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 前回6月の雇用統計の結果は、一言でまとめると、「良い方向に進んでいる」。決して弱いわけではないけれど、驚くほど強いわけでもなかった。

 ワクチンの普及と経済再開で、コロナの被害の大きかった娯楽や飲食業に従業員が次々と戻った結果、非農業部門雇用者数(NFP)は、85.0万人増(5月58.3万人増、4月27.8万人増)となりました。しかし大きな賃金上昇圧力は見られない。平均労働賃金は前月比0.3%増(5月0.4%増、4月0.7%増)。雇用者数は順調に増えているが、ブレーキ(利上げ)が必要なほどのスピードはない。FRB(米連邦準備制度理事会)にとってみると、まさに「ちょうどいい」結果となりました。

 労働参加率が横ばいのなか失業率がわずかとはいえ上昇したことは、雇用市場が引き続きFRBの緩和政策を必要としていることを示している。FRBのハト派メンバーにとっては、緩和縮小を急がない理由になります。少なくともタカ派の連銀総裁の先走りを抑える効果がありました。

 米国ではコロナ禍によって、昨年3月と4月のたった2ヵ月の間に2200万人もの雇用が失われました。それから先月までかけて雇用者は1,560万人増加したのですが、コロナ前の2020年2月に比べると、まだ640万人少ない状況です。

 パウエルFRB議長は以前、月間100万人近い雇用増を見たいと発言しています。もしその通りに、非農業部門雇用者数が1カ月に100万人増えていくと仮定するならば、今年12月には、米国の雇用市場はコロナ前の完全雇用状態に戻ることができるのです。

 FRBが来年1月に、緩和縮小を開始するかどうかは、これから半年間の非農業部門雇用者数がとても重要な要素となってきます。