その5 国内外の株式に分散投資する

 この点は、本連載の読者にはおなじみだろう。

 リスク資産への投資は、「日本株50%、先進国株35%、新興国株15%」をインデックス・ファンドで投資する方法を中心に、バブルのサイクルを考えながら、リスク資産への投資比率をコントロールする方法を説明した。

その6 買値ではなく未来を考える

 株式のインデックス・ファンドで運用している場合でも、まとまったお金が必要になった場合には、躊躇なく一部ないし全部を解約してこれに充てることが望ましい。投資信託の場合、最悪でも数日で換金できるので、昔風のFPのアドバイスのように、短期・中期・長期にお金の使途を分けて運用するような無駄なことはしなくていい。

 ただし、この場合に、自分の買値にこだわってファンドを売ることができない人がいるので、注意したい。自分が買った値段よりも安く売るのは、損であり、負けだ、と思うらしい。株式投資でも同様だが、自分の買値にこだわることは意味がない。

 株価が下がってしまった時は、投資効率のいい場所にお金を置いておいたのだが、たまたま不運なときに当たった、というくらいに理解して、淡々と売却・換金するべきだ。

 過去の推移はおおむね今後の動きには関係がないし、まして一投資家の買値が、今後の株価に影響することはない。

 また、自分の買値から何割上がったら売る(「利食い」売り)とか、あるいは何%下がったら売る(「損切り」売り)というルールを決めておいて機械的にこれに従うことを推奨する向きもあるが、間違いだ。その時の情報を見ずに、売り買いを事前に決めておくのは愚かだ。

 株式にしても投資信託にしても、その時その時の状況を前提に、将来どうなるかという一点のみから売り買いは判断すべきだ。

 お金は感情を込めずに淡々と、できるだけ合理的に扱うべきものだ。

その7 怖いのは市場リスクよりも「人間」と心得る

 投資信託で損をした人もいれば、怪しい投資話で損をした人もいる。もちろん、これらの損には株式市場など市場のリスク(とその時の不運)が大いに影響しているが、大きいし見落とせないのが、それらの商品に払った手数料と、それを売りに来たセールスマンの影響だ。特に、決定的に大きな損や、不当に大きなリスクの投資などは、他人に勧められて行うものが多い。騙される話はもちろん、それ以外の損失にあっても、怖いのは自分が分かっていて計算できている市場リスクではなく、人間である場合が多い。

 考えてみると、他人が儲け話を教えてくれるというのは変な話だ。教える側の立場を考えると、本当に儲かる話なら、他人には教えずに、自分で投資した方がもっと儲かるはずだ。他人に教える以上は少なくとも「非常に有利」な話ではないはずだと推測できるが、この推測は全く正しい。

 生命保険のような、本来、本人にとって必要でもないし得にもならないものを買ってしまうのも、多くの場合、セールスに乗せられるからだ。本当に必要な保険をネットで調べて、価格比較を自分のペースで行って、冷静に契約するなら、日本人はこんなに生命保険に入っていないはずだ。

 銀行員や証券マン、それにファイナンシャル・プランナーのような広義の金融関係者も含めて、彼らは、第一義的には顧客のためではなく、自分の生活と利益のために商売をしていることを忘れてはならない。お金の問題に関して他人を頼る際には慎重であるべきだ。特に、「お客様」気分で威張っていると、隙ができやすい。

「お金の話にあっては他人を信じるな」。これがたぶん一番大切な教訓だろう。