債務危機を回避するために巨額の財政赤字をマネタイズするしかなくなっている

 昨日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「インフレの上振れは一時的」との判断を繰り返した。そして、「足元の高インフレがインフレ期待の上昇をもたらしている兆候はない」と述べた。

 パウエルFRB議長は昨年の夏、景気が回復した場合FRBは利上げを検討するかと聞かれ、「利上げについては考えていない。利上げについて考えることすら考えていない」と回答した。それは今も変わっていないようだ。

 マーク・ファーバーに言わせると、「米国の財務省・企業・家計が膨大な債務残高を抱えているため、利上げは選択肢にない」となる。

過去8度の大統領任期中の米連邦債務と米連邦準備制度のバランスシート
(2008年以降、米連邦準備制度は議会にお金が「無料」であるという考えを与えた)

出所:ゼロヘッジ

 皆のおカネ(公金)は政治家に管理されると誰のおカネでもなくなる。そして、あきれかえることに、その希少資源は助成金という破廉恥な票の買収に、とてつもなく巨額で壮観なピラミッドのような公共投資に、権力の触手を伸ばしていく巨大官僚組織の増殖・維持に浪費されてしまうのだ。もちろん、公的支出は増加する一方である。減少することはない。各省庁の予算が権力の尺度となるからだ。その削減を計画するものなど、ただのひとりもいない。「公的」資金では、損益計算書や貸借対照表の心配がない。また、会計の真実性を確認するための説明や監査を要求する投資家もいない。そうした資金の運用で犯した失敗に対して責任を持つ人など誰もいない。

(フェルナンド・デル・ピノ・カルボ=ソテロ)

 世界中で横行している財政・金融介入によって、債務が前例のない規模に膨れ上がっている。『国家興亡の方程式 歴史に対する数学的アプローチ』の著者ピーター・ターチンによると、往々にして、迫りくる崩壊の最終的な引き金になるのは国家の財政破綻だという。

 エリートたちは市民の不満を、補助金や配給によってなだめなければならない。それらが尽きれば、もはや不満分子を監視し、人々を弾圧するしかなくなる。

 これからも輪転機を回し続けるためには、お金が「無料」でなくてはいけないのである。したがって、「インフレは一過性の、一時的なもの」でなくてはならない。

「では、金利がサゲサゲなら、私たちは皆、アゲアゲだろうか?いや、今や大多数の国で政府役人のほとんどがインフレの創出を願い、祈っている(ジンバブエとイランを除く)。そうすれば、抱えている巨額の債務は、インフレで劣化して価値を下げたおカネで返済できるからだ」

(ジョン・ボルソーバー)

 中央銀行は事実上独立性を失っており、債務危機を回避するために巨額の財政赤字をマネタイズするしかなくなっている。公的債務も民間債務も急増しており、債務のわなに陥っている。今後数年間、インフレ率が上昇するにつれ、中央銀行はジレンマに直面するだろう。