保有している株式同様、通貨の変動リスクを心配すべきである

 世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーターの創設者であるレイ・ダリオは12日、次のようにツイートし、通貨の変動リスクについて警鐘を鳴らした。

レイ・ダリオのツイート

出所:ツイッター

「ほとんどの人は、保有する資産の価値が上がっているのか下がっているのかばかりを心配している。通貨が上がっているかどうかを心配することはめったにない。それを考えてみてほしい。(1/2)」

レイ・ダリオの「変わりゆく世界秩序チャプター3:変わりゆく通貨の価値」

出所:レイ・ダリオ リンクトイン

 保有している株や他の資産がどのように動いているかについて、通貨が下がることについてあなたはどの程度心配しているか? もし、ほとんどの人と同じように心配しているのであれば、通貨のリスクにほとんど気づいておらず、心配するべきだ。

 株式市場の上げ下げばかりに気を取られているが、今後、通貨変動のリスクが懸念すべき事案になってくるとの主張だ。レイ・ダリオは過去数百年の歴史をひもとき、現金の価値は常に低下してきたことを明らかにしている。リンクトインに投稿されたレイ・ダリオの「変わりゆく世界秩序」の中から「チャプター3:変わりゆく通貨の価値」の一部をご紹介する。

 1700年以降に存在した約750の通貨のうち、残っているのは約20%のみであり、残っている通貨はすべて切り下げられている。1850年には、世界の主要通貨は今日の通貨のあり様とは異なっており、当時存在したのはドル、ポンド、スイスフランであった。現在のドイツでは、異なる通貨を使っており、円は存在していなかった。また、イタリアでは、6つの流通通貨があった。こうしたものの一部は完全に一掃され(ほとんどの場合、ハイパーインフレーションや戦争に敗北し、多額の戦争債務を抱えていた国だった)、まったく新しい通貨に置き換えられた。また、一部はそれらを置き換える通貨に統合された(たとえば、個々のヨーロッパの通貨はユーロに統合された)。また、英国ポンドや米ドルのように、存在しているものの価値が下がっているものもある。

 通貨が切り下げられる最も重要な要因は債務だ。なぜなら、お金を印刷する目的が債務負担を減らすことだからである。新しく生み出されたお金とクレジットがどのように流れるかによって、次に何が起こるかが決まる。お金と信用の供給の増加は、お金と信用の価値を減らし(それはそれの所有者を傷つける)、そして債務負担を軽減する。

 債務救済によって、このお金と信用が企業の生産性と利益へ流れるように促進されれば、実質株価(すなわち、インフレ調整後の株式の価値)の上昇が起こる。こうした資産からインフレヘッジ資産および他の通貨への流れを促進するために現金および債務資産の実質および将来の収益が毀損した場合、それはお金の価値の自己強化的な低下につながる。

法定通貨対ゴールド(オレンジ:蘭ギルダー 黒:英国ポンド 青:米ドル)

出所:レイ・ダリオ リンクトイン

 オーストリアの経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが述べたように、「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけ」である。

「私が最も懸念するのは、われわれの通貨の健全性についてだ。生産性を高めずに財政赤字を計上し、国債を発行し、貨幣を増発し続けることはできず、それは長期的に持続不可能だ」

(レイ・ダリオ)