インデックス・ファンドにも欠点がある!

 近年も、多くの個人投資家にとって現実的に無難で且つ概ねベストに近い運用は、インデックス・ファンドを用いる運用であるとの見解に大きな変化はない。多くの人にとって、インデックス・ファンドを用いる「簡便法」以上の成果を上げることを目指す努力に時間と労力を投じるよりも、他の稼ぎの手段に注力することや、人生を楽しむために時間とエネルギーを使うことの方が効率的だろう。

 しかし、そのインデックス・ファンドにも、改善が可能な欠点があると近年強く思うようになった。

 最初にそう思うようになったのは、2000年代に、TOPIXやMSCIの諸指数をはじめとする多くの株価指数が、「浮動株調整」を組み込むようになったことだ。浮動株調整では、単純な「株価×発行全株数」に基づく時価総額ウェイトではなく、市場で流通していると推定される株数に基づく流通時価総額を、指数を計算する際のウェイトに用いる。

 この流通時価総額は、主に、創業者、政策投資株主、大株主などの持ち株を除外することから計算されるが、主な株主の株式の移動によって、変化し、これが指数に反映する。即ち、インデックス・ファンドは、この変化する指数を追わなければならない。

 ここで問題なのは、インデックス・ファンドの売買につながるその変化が、売買よりも事前に発表されることだ。これは、程度として同じくらいひどい訳ではなくとも、原理的には、2000年の日経平均の銘柄入替で生じたような不利をポートフォリオとしての指数そのもの、及びその指数をターゲットにするインデックス・ファンドにもたらす要因である。

 インデックス・ファンドがアクティブ・ファンドに対して有利であることの大きな理由として、「売買コストが少なくて済む」ことが挙げられるのだが、浮動株調整は、このメリットを微少ながら損なうと共に、市場のトレーダー(今なら高速取引業者が中心だろう)に収益の(インデックス・ファンドの投資家には損の)チャンスを与えている。

 筆者は、TOPIXが浮動株調整を組み込むことを決めたときに、「市場の連中は、たくましく収益機会を作るものなのだなあ」との感想を抱いた。浮動株調整を行って、インデックス・ファンドにももっと売買をさせようとするとは、よく考えた仕組みだ。

 インデックス・ファンドの「強み」と「弱み」に関しては、別の機会に、記事ないしは動画で詳しく説明したいと思っているが、現在のインデックス・ファンドについては、運用として、原理的にも現実にも「アクティブ・ファンド(の平均)」よりも優れているものの、まだ改善の余地がある(その手段もある)。

 筆者とインデックス・ファンドの次の関わりは、「インデックス運用の改善の試み」にしたいと思っている。