ほどよく涼しい米景気

「熱すぎても冷たすぎてもダメ、ちょうどよい温かさでないとダメ」は、米国景気と米国株について、しばしば引き合いに出されるフレーズです。

「米景気が強すぎると金融が引き締められて株が下がる」「米景気が弱すぎると業績に対する不安から株が下がる」「ゆるやかな景気拡大が長期化する時、米国株の上昇は長続きしやすい」ということを、言っています。

 今年の米景気と米国株の関係についても、このフレーズがぴったりと当てはまります。米景気は基本的に好調です。

 ただ、2月半ばには、好調すぎて景気が過熱し、早期に金融緩和が縮小され金融引き締めが必要になる……との懸念が広がり、米国株は調整しました。長期金利が一時1.7%台まで上昇したことも嫌気されました。ところがその後、すぐに米景気が過熱することはないと見方が変わり、米国株は上昇が続きました。

 さらに最近になると、新型コロナ・デルタ型の感染拡大により景気拡大にブレーキがかかる懸念が出て、米国株が一時売られました。ただし、すぐに米景気が失速するとの見方はほとんどなく、かえって「金融緩和の縮小が先延べされる」との見方から、米国株は買い戻されました。米景気は「ちょうどよい涼しさ」と株式市場が解釈したことになります。

 こうした米景気の過熱懸念・減速懸念を反映して、米長期金利は推移しています。今は、ほどよく涼しいと解釈されています。今後、また「熱すぎ」「寒すぎ」と解釈される局面が来ると米国株の下落につながるので、長期金利の動きを引き続き、見ていく必要があります。

米長期(10年)金利推移:2020年1月2日~2021年7月23日

出所:QUICKより作成