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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]米国株・最高値!日経平均は逆行安。日本株「買い場」と考える理由
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日経平均の弱さが目立つ

 先週、連休前(7月19~21日)の日経平均株価は3営業日で455円下落し、2万7,548円となりました。日本の景気回復の遅れに加え、新型コロナ変異種で感染力の強いインド型(デルタ型)感染拡大によって世界景気の回復にブレーキがかかる懸念が出たことも、日本株が売られる原因となりました。

 コロナについては、ワクチン接種の進んでいる米国で、変異種の感染拡大が懸念されています。また、日本と経済的つながりが大きい東南アジア諸国(インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)で、感染拡大が経済に制約を及ぼす状況になりつつあることが不安視されている状況です。

日経平均週足:2020年1月6日~2021年7月21日

出所:楽天証券MSⅡより作成

 一方、米国株の主要指数(NYダウ、ナスダック総合指数、S&P500)は、先週末(7月23日)に軒並み史上最高値を更新しました。米国株と比較して日経平均の弱さが目立っています。

 米景気は好調。日米の景況感の差が、日米の株価パフォーマンスの差に出ています。ただ、米景気については好調すぎて「金融緩和の終了が早まる」懸念から、上値が重くなっていました。

 先週、変異種拡大で米国および世界景気にブレーキがかかる懸念が出て、米国株は先週前半に一時売られました。ただし、週後半には「金融緩和がさらに長期化する期待につながる」として、米国株は買い戻され、最高値を更新しました。

ナスダック総合指数、S&P500、日経平均の比較:2019年末~2021年7月23日(日経平均は7月21日まで)

出所:QUICKより作成、2019年末の値を100として指数化

ほどよく涼しい米景気

「熱すぎても冷たすぎてもダメ、ちょうどよい温かさでないとダメ」は、米国景気と米国株について、しばしば引き合いに出されるフレーズです。

「米景気が強すぎると金融が引き締められて株が下がる」「米景気が弱すぎると業績に対する不安から株が下がる」「ゆるやかな景気拡大が長期化する時、米国株の上昇は長続きしやすい」ということを、言っています。

 今年の米景気と米国株の関係についても、このフレーズがぴったりと当てはまります。米景気は基本的に好調です。

 ただ、2月半ばには、好調すぎて景気が過熱し、早期に金融緩和が縮小され金融引き締めが必要になる……との懸念が広がり、米国株は調整しました。長期金利が一時1.7%台まで上昇したことも嫌気されました。ところがその後、すぐに米景気が過熱することはないと見方が変わり、米国株は上昇が続きました。

 さらに最近になると、新型コロナ・デルタ型の感染拡大により景気拡大にブレーキがかかる懸念が出て、米国株が一時売られました。ただし、すぐに米景気が失速するとの見方はほとんどなく、かえって「金融緩和の縮小が先延べされる」との見方から、米国株は買い戻されました。米景気は「ちょうどよい涼しさ」と株式市場が解釈したことになります。

 こうした米景気の過熱懸念・減速懸念を反映して、米長期金利は推移しています。今は、ほどよく涼しいと解釈されています。今後、また「熱すぎ」「寒すぎ」と解釈される局面が来ると米国株の下落につながるので、長期金利の動きを引き続き、見ていく必要があります。

米長期(10年)金利推移:2020年1月2日~2021年7月23日

出所:QUICKより作成

日本株は割安と判断、秋口に政治波乱の可能性に注意

 日本株は、買い場と考えます。東証一部平均値で見ると、財務・収益力・配当利回りから考えて、「売られ過ぎ」と判断しています。確かに足元の景気回復は遅れていますが、いずれワクチン接種が進み米景気好調の恩恵も受けることで、景気回復も遅れて鮮明になると予想しています。

 リスク要因として、変異種拡大が世界経済に与える影響に加え、秋口の政治日程にも注意が必要です。日本では、自民党総裁選と衆議院選挙が予定されています。衆院選で自民党が敗北すると、外国人が日本株を売る要因となる可能性があり、注意が必要です。

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