証券市場での違法行為の取り締まりが強化される

 DiDi社が当局からのサイバー審査通告を受けた2日後、中共中央弁公庁と国務院が連名で発表した、《証券市場での違法行為を厳しく取り締まる意見》(以下《意見》)について、先々週のレポートで言及しました。

《意見》は、海外市場に上場する中国企業への監視強化;国境を越えたデータの流れや安全性に関する規制強化;証券市場における、詐欺、情報・データねつ造、インサイダー取引、不当な市場操作といった違法行為への処罰強化などを規定しています。

《意見》の発表を受けて、中国証券監督管理委員会の易会満(イー・ホイマン)主席が新華社通信の取材に応じ、これが中国の資本市場史において、党・政府機関が連名で発表する初めての文書であり、「現在と今後、証券市場に対する監督や法執行を全方位で強化、改善していく上でのマニュフェストになり、その意義は重大で、影響は深遠になる」と指摘しています。

 要するに、証券市場の発展をいかに経済成長に生かしていくか、というテーマに対して、中国共産党が出した「答え」が《意見》にほかならないということです。

《意見》は、「証券市場での違法行為に打撃を与えることは、資本市場の秩序を守り、資本市場の機能を有効に発揮するための重要な保障である」という文言から始まり、そのために「資本市場の法執行、司法体系の建設」をきっちりと推し進める必要があるという問題意識に立脚しています。

 そして、具体的に仕事をしていく上で、「制度設計」「不干渉」「ゼロ容認」を3原則に掲げています。これらは制度に基づき、秩序立てて証券市場を発展させること、政府は市場に干渉しないこと、違法行為を見つけた場合には例外なく処罰することを意味します。

 特に二つ目の「不干渉」に関しては、規制の強まる中国の資本市場に対し、懸念を示す海外の投資家に対するメッセージだと受け取れます。つまり当局は、今後の中国の資本市場に干渉や介入を行うとは思われたくないということです。

 前述の易主席によれば、《意見》公表後、すでに先物取引に関する法規定は全国人民代表大会(中国の議会)常務委員会で審議が始まっており、プライベートエクイティに関しても、もうすぐ始まるとのこと。

 また、証券市場での違法行為へ打撃を与えた具体例として、Le TV(楽視網;300104、深セン)の財務ねつ造、デフォルト事件にまで発展した華晨中国汽車控股(ブリリアンス・チャイナ・オートモーティブ、01114、香港)の債券情報公開をめぐる違法行為、康美薬業(Kangmei、600518、上海)をめぐる虚偽供述といった事件への処罰が進展を見せているといいます。

 今後、証券市場での違法行為が原因で、当局の処罰を受ける企業が増えていくことは必至であり、事件の性質や企業の属性次第では、中国だけでなく、日本を含めた海外の株式市場をも震撼させる動きに発展する可能性やリスクも十分に内包しています。

 このように、中国株式市場の影響力が世界的に増大していくのは必至なのです。

「自分は日本株、あるいは米国株しか買わないから、中国の動きは関係ない」ではいられなくなる、チャイナリスクから逃れられる市場など、もはやこの地球上に存在しないと言っても過言ではないでしょう。