中国のGDP統計は信頼性が低い

 中国景気全体の近況を示すものとして、今日、中国国家統計局が発表する4-6月のGDP統計に注目が高まっています。出てくる数字から景気のイメージをつかむことはできますが、数字の信頼性は高くありません。簡単に、2007年以降の中国GDPの推移を振り返りましょう。

中国の実質GDP成長率(前年比):2007年1-3月期~2021年1-3月期

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府の発表ベースでは、2007年から2019年まで、中国のGDP成長率は6%を下回ったことがありません。2020年1-3月期、中国政府は、コロナ危機で初めてGDPがマイナス(▲6.8%)になったと発表しました。私は、四半期ベースの赤字は、以前から何度もあったと見ています。たとえば、リーマンショック直後の2009年1-3月に、中国のGDPも一時マイナスになったと考えています。世界景気の影響を受けやすい中国のGDPが、こんなに安定しているはずがありません。

 リーマンショックで一時的に落ち込んだ中国景気は、2009年に中国政府が4兆元(約62兆円)の巨額公共投資を実施した効果で、一気に持ち直しました。中国の公共投資が、世界不況を救ったといわれました。

 ところが、後から振り返ると、この公共投資で膨らんだ非効率な投資が、その後の中国経済の構造改革を遅らせました。手っ取り早く稼げる鉄鋼・不動産・石炭開発などに投資が集中し、その結果、鉄鋼業などで過剰生産能力を抱え、地方には入居者のいない高層マンション群がゴーストタウン化しました。

 4兆元の公共投資で膨らんだ非効率な投資に足を引っぱられ、2010年以降、中国景気はじわじわと悪化していきました。2015年10-12月には、「チャイナショック」と呼ばれるほど、中国景気が悪化し、世界景気にもマイナス影響を及ぼしました。

 ところが、中国政府の発表するGDPを見ると、2015年も7%近い成長を実現していたことになっています。そんなことはあり得ないと思います。

 チャイナショックがあった2015年10-12月期と、それに続く2016年1-3月期は、中国景気だけでなく、世界中の景気が悪化しました。原油価格急落によって、ブラジル・ロシアなど資源国の景気が悪化しました。米景気も1-3月には、一時的に停滞色が強まりました。日本もこの時、景気停滞期に入りました。こうした現実が、中国のGDP統計にはまったく表れていません。

 2016年後半から、中国景気は盛り返しました。中国だけでなく、世界中の景気が回復に向かいました。中国GDPだけ見ていても、そうした、景気実態はまったく分かりません。中国の実態を知るには、他の景気指標を見る必要があります。