長期的には資源価格上昇は日本の景気・企業業績にネガティブ

 原油価格の上昇が短期的に日本の企業業績にプラスになるという話をしました。ただし、それはあくまでも短期的な話です。原油価格が大きく上昇してから1~2年たつと、安値在庫はなくなり徐々に最終製品にコスト高が転嫁されていきます。そうなると、消費にじわじわと悪影響が及ぶようになります。

 小売価格への転嫁が早いのが、ガソリンです。既に、レギュラーガソリン全国平均がリッター当たり160円に迫っています。経験則では、160円を超えると、日本の消費に悪影響を及ぼします。

レギュラーガソリン小売価格(リッター当たり、全国平均):2000年1月5日~2021年7月5日

出所:資源エネルギー庁「石油製品価格調査」より作成

 日本は資源輸入国ですから、長期的には原油価格上昇のネガティブ影響を受けます。

 原油価格上昇が、企業業績にプラス影響を及ぼすのは、価格が上昇してから1~2年までです。
ただし、自動車産業をはじめとした日本の製造業の国際競争力にとっては、原油が高騰した方が良いという面もあります。日本は省エネ技術で世界トップクラスにあるからです。

 ガソリン価格が高騰すると、日本の自動車産業の競争力が一段と高まります。燃費が良く、性能の良い日本車が世界で見直されるからです。近年の原油価格下落は、日本の自動車産業にとってマイナスの影響を及ぼしています。

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