今回のサマリー

●FRBは選挙の洗礼を受けない権力機関であり、政策の説明責任、透明性と一貫性を堅守している
●FRB首脳からのタカ・ハト発言の交錯は、市場との対話の一環として見るべき面がある
●不透明なコロナ克服過程の予想より、FRBの一貫した行動の想定が投資の指針として有効な場面も

FRBの透明性と一貫性

 前回のFOMC(米連邦公開市場委員会、6月15~16日)以降、FRB(米連邦準備制度理事会)当局者からはタカ派、ハト派の発言が交錯しています。市場では、FRBのスタンスは支離滅裂で真意不明といった指摘もあります。

 発言を振り返ると、FOMC直後の会見では、パウエルFRB議長が「景気回復完了まで経済に強力な支援を続ける」とハト派スタンスを確認する発言をしましたが、6月18日には、市場でハト派と目されるセントルイス連銀総裁のブラード氏が「インフレ加速なら2022年後半にも最初の利上げを」とタカ派コメントをして、株式相場を急落させました。

 21日には、市場でタカ派と位置づけられるダラス連銀総裁のカプラン氏が「(FRBによる)資産購入の調整を早期に開始するのが健全」と語り、他方で、ハト派とされるNY連銀総裁ウィリアムズ氏が「景気回復はまだ金融政策方針を変えるには不十分」と発言。その後もタカ・ハト両サイドの発言が出ていますが、市場の反応は徐々に小さくなっています。

 FRBは、完全雇用(失業率4%)と目標インフレ(前年比+2%)を達成すべく、金融政策を行使する権力機関ですが、FRB幹部・スタッフは、民主的選挙の洗礼を受けません。歴史的には、むしろ政治がとかくインフレ高進を招きやすいため、専門性を有する人たちが金融政策を独立して担うようにシステム構築されたものです。

 それだけにFRB当局者は、金融政策の発動には、専門家としての説明責任、透明性と一貫性を堅守しています。

 そんな彼らがタカ・ハト発言を交錯させて、市場を疑心暗鬼にさせるのは、FRB内部の意思疎通の欠如や情勢判断の混乱によるものでしょうか。必ずしもそうではありません。