循環的な景気悪化局面で「バブル崩壊」の声が出る

 悩ましいのは、景気悪化で日経平均が下がってくると、いつも「バブル崩壊」の声が高まることです。後から振り返ると「循環的な景気悪化」に過ぎず、次の循環的な景気回復を待てば良いだけなのに、「バブル崩壊」と言われると、急いで株を売らなければならない気になります。日本株は、平成時代にバブル崩壊を経験したので、まだ投資家の心の中にバブル崩壊の傷跡が深く刻み込まれているためと思います。

 日経平均は1989年12月、バブル景気を背景に史上最高値(3万8,915円)をつけましたが、その後2002年まで「失われた10年」と言われるバブル崩壊に見舞われました。2008年のリーマンショック時に、一時バブル崩壊後安値を更新したので、そこまで含めて「失われた20年」と言うこともあります。

平成・令和の日経平均月次推移:平成元年(1989年)1月~令和3年(2021年)6月(29日)

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 バブル時に利益や資産価値で説明できない高値で買われたため、下落局面は10年以上の長期に及びました。ただし、失われた20年で実施した構造改革の成果で、日本企業はよみがえり、平成の最後の10年は「復活の10年」となりました。

 令和に入ってから、日経平均はコロナショックで一時暴落しましたが、これはバブル崩壊ではなく「景気循環による悪化」と考えられます。実際、暴落直後(2020年3月)から次の景気回復を買う上昇相場はすぐに始まっています。

 このように日経平均は平成時代、「バブル崩壊」と「復活」の「大波」を経験しました。ただし、もっと細かく見ると、景気循環による「小さな波」をいくつも経験しています。それを以下のチャートに示します。景気後退期に色をつけています。

景気循環と日経平均月次推移:1999年1月~2021年6月(29日)

出所:景気後退期の判断は、内閣府。ただし、2018年10月に始まった不況が2021年6月で終わっていると判断したのは楽天証券、QUICKより作成
注:2018年10月から始まった景気後退期を「コロナショック」と仮に命名しています。ただ、コロナの影響で景気が落ち込んだのは2021年で、2018年10月~2019年12月はコロナと関係なく米中貿易戦争などの影響で景気後退となっていました。したがって、2018年10月に始まった景気後退は、厳密にいうと「貿易戦争&コロナショック」と命名すべきところですが、ここでは仮にコロナショックとしています

 株は、景気循環を半年~1年、先取りして動く傾向があります。ITバブル崩壊とリーマンショックでは、景気後退期に入るより1年近く早く、株は下げ始めています。ただ、景気回復期に戻ると、また株は上昇を始めています。景気循環と株は密接に連関していることがわかります。

 ただし、不思議なことに景気が悪化すると、バブル崩壊の声が強まります。ITバブル崩壊不況は、「バブル崩壊」と位置づけられています。リーマンショックも、バブル崩壊と認識されています。後から振り返れば、たった1年程度で終わってしまう、普通の景気後退なのに、リーマンショックの最中には「100年に一度の不況」と、何年も続くバブル崩壊になると誤解させるような呼び方がされます。