嗚呼カン違い

 このGDPギャップ鑑識眼を持っていれば、市場で流布されるカン違い情報への惑いも軽減されるでしょう。

カン違い(1)「2022年は景気悪化」論

 2021年の+7.0%もの高成長は、コロナ禍でGDPギャップがマイナスになり、キャッチアップで速やかに伸びる部分が大きいからと、これをさらに促す突飛(とっぴ)な財政政策が打たれているからです。その後2年の成長の+3.3%、+2.4%は景気鈍化とか悪化とは言いません。巡航成長ペース+1.8%をさらに上回っており、むしろ景気過熱リスクをはらむ成長率です。

カン違い(2)インフレは「過渡的」か「真性」か

 足元で急上昇するインフレの先行きについて、過渡的上昇が一巡して沈静か、真性インフレにつながっていくか、それぞれについて、市場には強い予想を強調する人たちがいます。

 しかしFRBにも誰にも未知であり、現時点でどちらかを確定的に言い当てる術は存在しないでしょう。あくまでリスクとして捉えるのみです。過渡的か真性かを判定する時間軸は、まず過渡的要因が沈静してから、インフレの底流を見る流れとなり、6~12カ月は要すると判断しています。それまでの強い予想に確かな根拠はほぼないと言えます。

カン違い(3)FRBはタカ派転換

 FRBは新型コロナ禍の経済悪化を阻止すべく、超ド級の金融緩和を行いました。今、コロナワクチン接種が進み、経済が正常化に向かう中で、景気回復への不確実に対応する金融緩和継続と、インフレ・リスクに対応する金融緩和解除の模索の両にらみです。

 まずは、前者に比重があり、市場を驚かす情報発信によってショックを与えることがないよう腐心し、やがて時間の経過とともに、資産市場のバブルをけん制しつつ、インフレ制御に比重を移していく、そんな是々非々対応するしかないでしょう。その点で、FRBはここまで、硬軟情報発信をとり混ぜながら、巧みに政策運営をしていると評価しています。