米国の実体経済の本格回復に「伸びしろ」あり。目先は「副作用」で価格上昇も

 価格やそれによって計算される物価指数こそ上昇していますが、社会の実情(実体経済)の動向をみた場合、まだ景気回復は途上であることがわかります。以下の図のとおり、米国国内の銅需要と石油需要の回復がまだまだ途上であるためです。

図:米国の銅と石油需要の推移

図:ブルームバーグおよびEIA(米エネルギー情報局)のデータより筆者作成

 銅と石油の価格はゆうにコロナ前の水準を超えていますが、需要は以下のとおり、コロナ前の水準まで回復していません。つまり現在の米国経済において、価格と実態は、乖離(かいり)しているのです。イメージと実態が乖離していると言ってもよいと思います。

 価格が実態以上の上昇を演じているのは、冒頭で触れ、その後「ゲタ」と表現した、金融緩和策の「副作用」が影響していると考えられます。

 金利引き上げと量的緩和の縮小(テーパリング)が議論されることが示唆されたものの、目先数カ月は、まだゼロ金利政策や大規模な資産購入は続きます。このため、引き続き「副作用」が続く可能性があると、筆者は考えています。「副作用」が続く、すなわち、価格が実態以上の上昇を演じ続ける可能性があるわけです。

 とはいえ、実態が価格に追いつく可能性もあるわけです。1年以上、強い緩和的な措置を続けてきたわけですので、ここからは、投資(マネーゲーム)ではなく、実体経済の回復に直接的に貢献するようなお金の使い方をすれば、実体経済が回復し、やがて銅や石油の需要が回復していく可能性もあるとみられます。

 需要が回復し、そして価格が上昇した場合、それは「実態を伴った価格上昇」になります。

 米国経済の改善の余地、「伸びしろ」は、まだまだあります。この「伸びしろ」を埋めるような動きが目立てば、力強い景気回復が訪れるでしょう。(この時初めて、具体的な利上げやテーパリングの議論が開始されるべきだと筆者は考えています)

 まずはそうなるまで、特に景気動向に敏感な銅や原油などのコモディティ銘柄の価格は、「副作用」によって、上値を伸ばす可能性があると考えています。

 そして、望まれる真のインフレ(実態を伴った物価高)が訪れ、力強い景気回復が実感できるようになれば、それを糧にさらに上値を伸ばす可能性があるとみています。