損切りNG思考(3)シナリオが崩れたら損切りする

 3つ目は、機械的に〇%下がったら損切り、とするから損切り貧乏になるのであって、自分で想定した今後の株価シナリオそのものが崩れたことが分かった段階で、損切りをすればよい、というものです。

 この考え方は、ファンドマネジャー出身の方とか、ものすごく頭がよい方が唱えることが多いという印象です。つまり、100%ファンダメンタルのみで行動するということです。

 確かにプロの投資家は、株価チャートを見て「ここまで下がったら損切り」とはしませんし、買値から10%下がったら機械的に損切り、ということはしていません。あくまでもファンダメンタルの変化が生じ、当初買ったときのシナリオが崩れたことが分かった段階で、損切りを実行するかどうか検討します。

 では、これと同じことを個人投資家もやれるかといえば、ほとんどの個人投資家はできないと思います。

 そもそも「将来この会社はこうなる」というシナリオは、将来を予想しているものです。でも、昨今では会社の社長でさえ、1年後の業績を予想するのが難しいのに、百戦錬磨のプロはともかく、個人投資家が将来の会社の状況を予想すること自体がほぼ不可能と言わざるを得ません。

 そしてもう一つ怖いのは、シナリオが崩れたと個人投資家が気づいた時点で、すでに株価は大きく値下がりしているので、損切りをしたときの損失が大きく膨らんでしまうという点です。

「シナリオが崩れない限り、10%、20%程度の含み損は何も気にせず保有を続けるべき」とレクチャーしている人がいましたが、もしシナリオが崩れたら30%、50%、時には80%の損失を被る恐れだってあります。さらには、シナリオ自体が誤っていたら、致命的なダメージを食らう危険もあります。

 このように、「(3)シナリオが崩れたら損切りする」という損切り貧乏解決策は、そもそも個人投資家が正しいシナリオを作ることが難しいだけでなく、シナリオが崩れたときに被る損失が極めて大きくなる恐れがあるので、お勧めしません。

 損切り貧乏は確かに避けたいところですが、損切りの仕方がそもそも誤っていれば損失も膨らんでしまいますし、「損切り自体不要」という考え方は大きな損失につながるリスクがあるため、筆者は絶対に支持しません。

暴落は忘れたころにやってくる?生き残るためのルール

 ちまたで言われている損切り貧乏の解消策は、今が上昇相場だから使える、もしくは致命傷にならずに済んでいるだけかもしれません。

 今後、日経平均株価が2万円になったら、1万円まで下がったら……。それでも生き残れるルールを今のうちからしっかり決めて守ることが、株価のとてつもなく大きな下落が来た時に自分の財産を守ることにつながります。

「損切り貧乏」を回避する投資テク1:やってはいけない3つのことを読む