復習:損切り貧乏にならないためのポイントは?
前回に引き続き、今回も「損切り貧乏」について取り上げます。
まず前回の復習を兼ねて、損切り貧乏にならないためのポイントを挙げていきます。
≫前回「損切り貧乏」を回避する投資テク1:やってはいけない3つのこと
損切りのルールをしっかり決める
ルールを決めないと、株価が急落したときに慌てて損切りしたりして、損失が膨らんでしまいます。
損切りのラインを厳しくしすぎない
例えば移動平均線を1円でも下回ったら損切り、とか、買値を1円でも下回ったら損切り、とすると、日々の細かな株価の変動だけで損切りラインに抵触してしまい、売る必要のないところで売ってしまいます。
損切り後株価が上昇したら買い直す
損切り後、その株が上昇しても買い直さないと、株価上昇による利益を得られず、損切りによる損失のみが残ってしまいます。
損切りしなかったら、どうなったかを確かめる
もし損切りしなかったら、さらなる株価下落でもっと損失が大きくなっていたならば、損切りをして損失が生じても、それが正しかったということが確認できます。
損切り貧乏を回避できない!NG思考
損切り貧乏に悩んでいる個人投資家はとても多いので、SNS(交流サイト)などでも損切り貧乏の解決策について、さまざまなことが語られています。
それらは一見すると確かに正しいように思えるのですが、実際には個人投資家の大部分が実践できない、あるいは実は根本的に危ない考え方なのではないか、と筆者は思っています。
解決策を実行しているつもりが、そうなっていないのであれば、それは解決策になりません。十分注意してください。
損切りNG思考(1)上昇トレンドの時は損切りをしないようにする
1つ目のダメな解決策は、「株価が上昇トレンドにある間はそもそも損切りをしなくてよい」というものです。
確かに、株価チャートを見ると、ところどころ下がっている時期があるものの、長期的に見れば株価は右肩上がりに上昇している、という銘柄は数多くあります。
そうしたチャートを見せられながら説明を受けると、「なるほど。株価が右肩上がりの間は、売らなくても株価はまた上昇するから、損切りは確かに不要だな!」と思ってしまうのではないでしょうか。
でも、これは大いなる勘違いであり、極めて危険な考え方です。
確かに、過去のチャートを見て「中長期的に上昇している間は売らなくてよい」と言われれば、その通りです。
しかし、足元で保有株の株価が下落しているとき、それが上昇途中の単なる押し目なのか、天井をつけて大きく下げに向かうのかは、実際は分からないものです。
もちろん、上昇途中の単なる押し目なら、持ち続けていれば株価は上昇するので、事なきを得ます。でも、天井を付けた後の下げの局面に入っていたならば、持ち続ければ持ち続けるほど株価は下落してしまいます。上昇相場ではないことが分かった時点で持ち株を損切りしようとしても、すでに株価は大きく値下がりし、多額の損失を被ってしまいます。
怖いのは、何年もの間、長期的に上昇を続けているときです。多少株価が下がっても損切りせずに持ち続けていれば株価は元に戻る……これを何度も何度も経験していると、それが今後も未来永劫続くと勘違いするようになります。
でも、残念ながら株価は天井を付けると、持ち続ければ持ち続けるほど損が膨らむという、無慈悲な下落をするものなのです。
ですから、(1)の解決策は、多額の損失を被ってしまうリスクが高いという面で、筆者はお勧めしません。
損切りNG思考(2)よい会社の株だけを買うようにする
2つ目は、「よい会社の株だけを買う」というものです。
確かに、業績がよくない銘柄や、あるテーマに関連して短期間で急騰している銘柄を高値づかみしてしまえば、その後、株価が下落して損切りとなる可能性も高まりますから、間違ったことは言っていません。
では、なぜこの解決策がよくないかといえば、「そもそも個人投資家の大部分はよい会社の株を選別して買うことができない」からです。
無論、業績が今後も伸びるような、よい会社を株価が大きく上昇する前から見つけて投資することができれば、その後、株価が多少下がろうが、持ち続けることにより株価が上昇しますから、損切りそのものを考える必要がなくなります。
でも、筆者も含め大部分の個人投資家は、「この会社はきっとよい会社だ!」と思って選んだ銘柄が、実はよくなかった、というケースが頻繁に生じるのです。
また、確かに買った時点ではよい会社だったかもしれませんが、その後の環境変化によりよい会社から転落してしまうこともあります。そうなると、株価は当然下がってしまう可能性が高いですし、株価下落を我慢して保有を続ければ続けるほど損失が拡大してしまう恐れが高いのです。
ですから、「(2)よい会社の株だけを買うようにする」は、机上では正しいのですが、実際に多くの個人投資家ができないことなので、お勧めしません。
損切りNG思考(3)シナリオが崩れたら損切りする
3つ目は、機械的に〇%下がったら損切り、とするから損切り貧乏になるのであって、自分で想定した今後の株価シナリオそのものが崩れたことが分かった段階で、損切りをすればよい、というものです。
この考え方は、ファンドマネジャー出身の方とか、ものすごく頭がよい方が唱えることが多いという印象です。つまり、100%ファンダメンタルのみで行動するということです。
確かにプロの投資家は、株価チャートを見て「ここまで下がったら損切り」とはしませんし、買値から10%下がったら機械的に損切り、ということはしていません。あくまでもファンダメンタルの変化が生じ、当初買ったときのシナリオが崩れたことが分かった段階で、損切りを実行するかどうか検討します。
では、これと同じことを個人投資家もやれるかといえば、ほとんどの個人投資家はできないと思います。
そもそも「将来この会社はこうなる」というシナリオは、将来を予想しているものです。でも、昨今では会社の社長でさえ、1年後の業績を予想するのが難しいのに、百戦錬磨のプロはともかく、個人投資家が将来の会社の状況を予想すること自体がほぼ不可能と言わざるを得ません。
そしてもう一つ怖いのは、シナリオが崩れたと個人投資家が気づいた時点で、すでに株価は大きく値下がりしているので、損切りをしたときの損失が大きく膨らんでしまうという点です。
「シナリオが崩れない限り、10%、20%程度の含み損は何も気にせず保有を続けるべき」とレクチャーしている人がいましたが、もしシナリオが崩れたら30%、50%、時には80%の損失を被る恐れだってあります。さらには、シナリオ自体が誤っていたら、致命的なダメージを食らう危険もあります。
このように、「(3)シナリオが崩れたら損切りする」という損切り貧乏解決策は、そもそも個人投資家が正しいシナリオを作ることが難しいだけでなく、シナリオが崩れたときに被る損失が極めて大きくなる恐れがあるので、お勧めしません。
損切り貧乏は確かに避けたいところですが、損切りの仕方がそもそも誤っていれば損失も膨らんでしまいますし、「損切り自体不要」という考え方は大きな損失につながるリスクがあるため、筆者は絶対に支持しません。
暴落は忘れたころにやってくる?生き残るためのルール
ちまたで言われている損切り貧乏の解消策は、今が上昇相場だから使える、もしくは致命傷にならずに済んでいるだけかもしれません。
今後、日経平均株価が2万円になったら、1万円まで下がったら……。それでも生き残れるルールを今のうちからしっかり決めて守ることが、株価のとてつもなく大きな下落が来た時に自分の財産を守ることにつながります。
≫「損切り貧乏」を回避する投資テク1:やってはいけない3つのことを読む
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