今度は買い遅れが怖い?

 筆者もかねてから、超金融緩和を背景にした超ド級の株式金融相場が、金融緩和解除への小さな第1歩となるテーパリング(観測)にぜい弱であろうという想定でした。

 しかし、相場下落への敏感さは、相場自体が事前にどれだけ高く上がって、含み益という潜在的反落圧力をどう膨らませているか次第。2~3月にグロース銘柄群が金利上昇恐怖症で早々に大きく反落し、株式相場全般の下方圧力はいったんガス抜きされた感があります。

 グロース銘柄にはまだ神経質さが残りますが、景気・バリュー株を軸に相場全般が、景気やインフレの加速を示唆する指標の過渡的振れにも目を慣らし、テーパリングへの道、その後の状況を冷静に見定めるステージを、7~8月にかけて期待しています。順当には、景気・バリュー株からグロース株へ堅調さが広がるトリクルアップ展開の想定です。

 もちろん、2021年終盤の数カ月には、GDPがインフレ・ギャップ領域に突入し、インフレ、長期金利、金融政策の先行きについて、今より具体的に織り込むべき場面になるでしょう。従来のように、金融相場終幕の警戒シナリオばかりでなく、相場の下落が軽減化されて、その後につながる希望のシナリオも、両にらみできるだけの条件が垣間見え始めています。

 ただし、足元の一進一退の地合いを上抜けた後、警戒シナリオ浮上までの期間を勘案すると、新規投資の購入チャンスはあまり長くはなさそうです。「慎重に前向き」な視座を共有する投資家は、「買い遅れ」に慌てないよう、6月中のポジションの保持、構築が妥当と考えます。

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