雇用統計は、なぜ大外れするのか?

 BLSが5月7日に発表した雇用統計では、4月のNFPは、予想の100万人増を大きく下回り、26.6万人の増加にとどまりました。

 なぜ予想はこれほど外れるのか? 理由は雇用者数の予測方法にあります。予測は、実はとてもシンプルな方法で、ある業種の営業再開のペースを見て、その割合に応じて雇用者を計上するというものです。例えば、デパートの50%が再開したら、スタッフの数も以前の5割まで戻るというように集計します。

 しかし現実はそれほどシンプルではなく、再開率に合わせて単純に従業員を増やしているわけではありません。まずはある程度のスタッフを戻して様子を見る。必要があればもっと増やすし、そうでなければ少人数で回すというやり方が普通。前回の雇用統計の雇用者数の少なさは、企業の景気見通しが、「予想値」に表れるよりかなり慎重なことを示したともいえます。

 より正確な情報を知りたければ、修正後の過去データを見たほうがいいのですが、マーケットは修正データには興味がないようです。

 雇用側は「レイオフ」という再雇用前提の一時解雇制度を使えるので、採用の調整がしやすいです。一方で、雇われる側は、給料より失業手当が高いなら失業したままでいいと思っています。FRB(米連邦準備制度理事会)も、寛大な給付金が再雇用の妨げのひとつになっていることを認めました。

 前回の雇用統計の詳細を見ると、レジャー・サービス関連の雇用は33.1万人増加。娯楽・ギャンブル関連や宿泊業でも増加が目立ちました。

 レストランなどでは、米政府の手厚い失業手当のせいで、従業員の確保に苦労していると報告されています。その一方小売業は弱かった。経済が再開しても業種によって回復には濃淡があり、それが雇用統計の予想をいっそう難しくしています。

 FRBは「緩和縮小と雇用市場の回復はセット」だという立場。パウエルFRB議長は、「100万人程度の雇用増が数カ月間以上継続することを望む」と述べていましたが、これがFRBにとっての「雇用の回復」の基準になるわけです。

 前回の結果が悪く、雇用の回復は振り出しに戻った状態。緩和縮小のためには、今回100万人近い雇用増が必要なことはもちろんですが、それでもまだ十分ではありません。道のりは意外に険しいといえます。