今日のポイント

・中国景気は好調。消費が安定的に高成長。共産党大会前に中国政府が公共投資を増やした効果もある。

・中国景気は2018年も好調と予想。資源を爆買いしている中国に、資源価格が大きく下がったメリットが出ている。民間企業の設備投資が回復していることにも注目。

 

世界同時の好景気を背景に、外国人が日本株の組み入れを引き上げ

 日経平均は、24日でついに16連騰となり、歴代トップの連騰記録をさらに伸ばしました。外国人投資家が上昇を牽引しています。外国人は、世界同時の好景気が続く中、「世界景気敏感株」である日本株の組み入れを引き上げていると考えられます。

 今、世界的に製造業が復活、ひさびさに設備投資が盛り上がる機運があります。中国では、産業用ロボット・工作機械など省力化機器への投資を拡大する動きがあります。中国による「ロボット爆買い」と言われる注文が、日本のロボット産業にも出ています。

 これまで、製造業の組み入れを下げ、非製造業(IT・情報通信など)の組み入れを高くしてきたグローバル投資家は、製造業復活を受けて、製造業の組み入れを引き上げる必要を感じています。そこで、製造業が強い日本株を買う動きが出ています。

 世界的に製造業の復活が続く間は、日本株を見直し、買い増しする動きが続くと考えています。

 

中国が、米国とともに世界景気の回復を牽引

 世界同時の好景気はいつまで続くでしょう?GDP規模で世界第1位の米国と、第2位の中国の好調が、寄与しています。この2大国がどうなるかが、世界景気の先行きに重要な影響を及ぼします。

中国では24日、5年に1度の重大イベント「共産党大会」が閉幕しました。大会後の中国経済にどういう変化があらわれるか注目されます。今日は、中国経済の現状と、先行きを展望します。

 中国には経済統計が操作されているという疑念があり、現状を正確に把握することが困難です。中国国家統計局が発表するGDP統計を見ていると、いつも安定的に高成長が続いていますが、それを鵜呑みにするわけには行きません。操作の疑惑が強く、もっとも信頼が低いのがGDP統計です。

中国の実質GDP成長率(前年比):2007年1-3月期~2017年7-9月

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府の発表ベースでは、2007年以降、中国のGDP成長率は6%を下回ったことがありません。ただし、現実には、リーマンショック直後の2009年1-3月には、中国のGDPも一時マイナスになったと考えられます。世界景気の影響を受けやすい中国のGDPがこんなに安定しているはずがありません。

 もう1つ中国GDPには、おかしなことがあります。中国経済が高成長しているのは事実ですが、GDP規模が大きくなるにしたがって、物価上昇の影響を除く実質GDPの成長率は低下するのが自然です。世界第2位のGDP大国になった今なお、7%前後の高成長が続いているはずがありません。

 

李克強指数に見る中国の実態

 中国景気は、2015年10-12月が大底で、2016年に入ってから回復トレンドに入りました。2017年も、好景気が続いています。それが、李克強指数(※注)の動きに表れています。

(※注)李克強指数:中国の李克強首相は、首相になる前の2007年に「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費の変化を見た方が実態がわかる」と語ったとされる。その話を受け、鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。中国経済の実態をよく表していると評価されている。

李克強指数の推移:2007年1月-2017年9月

出所:ブルームバーグより作成

 中国経済の実態をあらわしていると考えられる李克強指数を見ると、中国経済がけっこう激しく変動していることがわかります。中国政府が発表するGDP成長率とは異なる、中国景気の実態がここから見て取れます。

 中国景気が以下のように推移してきたことがわかります。

(1)2008年にリーマンショックで悪化

(2)2009年は巨額(4兆元)の公共投資実施で急回復

(3)その後、2015年まで低迷

(4)2016年以降、回復が継続

 中国景気の現状は、中国の生産者物価指数にも表れています。生産者物価の上昇は、中国経済の体温上昇を示し、下落は体温低下を示します。以下の通り、生産者物価指数は、李克強指数と、ほぼ同じ動きをしています。2012年以降、マイナス圏に沈んでいましたが、2016年から中国経済の回復を映して、大きく上昇しています。

中国生産者物価指数(前年比):2007年1月-2017年9月

出所:ブルームバーグより作成

 私は、中国景気の実態は、李克強指数や生産者物価指数に加え、中国でビジネスを行っている日本企業の声から、判断しています。現在、中国でビジネスを行う日本企業から、中国ビジネス好調の声が聞かれます。

 

共産党大会が終了しても、中国景気は好調を保つと予想

 中国景気は好調です。共産党大会前に、公共投資を増やした効果(※注)が出ています。

(※注)共産党大会前の公共投資

 中国では、24日に共産党大会が閉幕。共産党大会は5年に1度開催される、国家運営の最高意思決定機関で、過去5年を総括、今後の計画をたてる。共産党大会で高い成長を実現した実績を報告するため、中国政府は大会前に公共投資を増やす傾向がある。

 今後はどうでしょう?共産党大会が終わった今、中国政府が公共投資を削減すれば、景気が悪化する可能性はあります。ただし、私は、中国景気が急に悪くなるとは考えていません。2018年もそこそこ好調を保つと考えています。

 日本ではいつも「中国景気が悪くなる」という報道が目立ちます。中国景気が構造問題を抱えていることを問題視する内容が多いが、必ずしも中国景気の現状を表していません。

 中国が今、好調なのは、公共投資だけではありません。民間の消費が高成長を続けています。所得水準向上によって、消費が安定的に高成長する段階に入っています。それに加え、今年は民間の設備投資も伸びています。世界トップとなったスマホの生産や、自動車産業などで、積極的な投資が行われています。

 資源価格が急落した効果が、中国経済全般に恩恵を及ぼしている面もあります。中国は「資源爆買い」国と言われます。資源価格急落は、中国経済にプラスです。資源価格急落直後は、石炭産業や鉄鋼産業がダメージを受け、中国経済全体に悪影響がおよびました。今は、逆に、資源価格下落が、経済全体に恩恵を及ぼす段階に入っています。

 中国は、社会主義国の体制を残したまま、経済の資本主義化を行いました。経済が巨大化した今、計画経済のひずみがいろいろなところに表れています。一方、民間経済は、強力なバイタリティーを持っています。太陽電池・スマホ・ドローンなど、成長市場で無謀ともいえる大量投資を行い、世界トップの座をとっていくのが中国流です。今、車載用電池でも、大きな投資を行っています。将来、EV(電気自動車)に使う電池で、中国が世界トップになる日が来る可能性も、否定はできません。

 日本株の先行きを考える上で、当面、中国経済の状況から目が離せません。日本企業の9月中間決算で、中国の現状についてどういう話が聞けるか、注目しています。