8,000万円の財産で470万円の相続税をどう見るか

 現在、相続税は「3,000万円+相続人の数×600万円」の基礎控除が設けられ、これを超えた分に課税がされることになっています。

 ですから、財産が8,000万円で、相続人が子ども2人だとすると、課税される財産は基礎控除4,200万円を差し引いた3,800万円となります。

 そして相続税額は合計で470万円です。もし財産を子ども2人で4,000万円ずつ相続したなら、1人あたりの相続税は235万円です。

 この相続税額を高いと見るか安いと見るかは人それぞれでしょうが、筆者としては「4,000万円の財産を相続して税額が235万円ということは、税率は6%弱。それなら素直に納税しておいてもよいのではないか」と考えます。

 どのくらいの相続税額であれば積極的に相続税対策をとるべきかどうかは、さまざまな要素がからんでくるため一概には言えませんが、筆者の見解としては2,000万~3,000万円以上が一つの目安です。

 要は、相続税対策を行うことにより生じるリスクよりも、相続税軽減により得られるメリットが大きいかどうかで判断することになります。

本当に不動産に換える必要性があるのか?

 例えば相続税対策の典型的なパターン、借り入れをしてアパートを建てるとなると、確かに相続税額は軽減されます。でも「アパート経営」という事業そのものが成り立たなければ、逆にお金が出ていってしまうというリスクも同時に生じるのです。

 立地的にアパート経営がうまくいく可能性がある場所であれば、やってもよいと思いますが、単に相続税を軽減するのが目的なのだとしたら、アパート経営が事業として成立するのかどうかをよく考えてから実行するようにしてください。

 相続税対策でアパート経営を検討する場合、もう一つ考えるべきなのは、財産を相続する側がアパートを欲しいかどうかです。

 もし筆者が相続人の立場だとすれば、十分に収益性のあるアパートならもらってもよいですが、事業として成り立たないようなアパートをもらっても困ってしまいます。

「アパートを建てるなんて余計なことしないで、多少、相続税が増えたとしてもお金の形でもらった方がよかった」と思うのが正直なところです。

 相続する側にとっては、相続税の負担がどれだけかという点も大事ですが、それ以上に財産をどんな形のものでもらうかも重要なのです。

 相続税を抑えるため、よかれと思ってやったのに、相続する側からすれば喜ばしいことではなかった……ということがないように、対策を実行する前に、相続する側の意見も事前に聞いておいた方がよいと思います。