日経平均先物、踏み上げはほぼ終了

 昨年5月以降の日経平均急騰に、需給面で先物「踏み上げ」【注】が寄与していたことは、本連載でたびたび指摘してきました。

【注】踏み上げ
 日経平均が下落すると予想して日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られること。

 それが、東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の推移から読み取れます。詳しく説明すると難解なので、説明は割愛して結論だけ述べます。2つ覚えてください。

【1】東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。

【2】東京証券取引所が発表している「裁定買い残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れます。買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。

 それでは、2018年以降の日経平均と、裁定「売り残」「買い残」の推移をご覧ください。

日経平均と裁定売り残・買い残の推移:2018年1月4日~2021年5月24日(裁定売り残・買い残は2021年5月14日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 2021年5月14日時点で、裁定売り残は、9,569億円まで減少しました。コロナショック直後に約2.6兆円あったのと比べて大幅な減少です。

 日経平均が下落すると予想して先物売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐための先物買い戻しを迫られてきたことがわかります。つまり、先物の「踏み上げ」が起こっていました。

 注目いただきたいのは、上のグラフに矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。2カ所あります。2019年10~12月と、2020年6月~2021年3月です。ともに、日経平均が大きく上昇する中で、裁定売り残高が減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。

 5月14日時点で、裁定売り残が9,569億円まで減少しましたが、裁定買い残も6,074億円と低い水準です。裁定買い残は、3月には1兆2,000億円まで増加していましたが、5月に投機筋(主に外国人)が日本株売りに転じたため、再び1兆円割れまで減少しました。

 日経平均先物「踏み上げ」による、先物買い戻しは終了したと言えます。投機筋のポジションはいまだに売り超(売り越しが買い越しより大きい状態)になっており、ここからさらに売りを積み上げていく状況にはないと、私は予想しています。

 私は、これから米景気・中国景気拡大の恩恵を受けて、年後半には日本の景気回復もより鮮明になってくると予想しています。

 ワクチン接種の遅れで内需回復が遅れても、世界景気回復の恩恵によって、日本の景気回復が進むと見ています。

 そうなれば、外国人投資家「実需筋」による日本株の買い付けが増加し、日経平均は年初来高値を更新していくと予想しています。

 ただし、そうなるまで、今しばらく時間が必要です。しばらくスピード調整が必要と考えています。

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