超インフレ時代がやってくる?  I Feel It Coming

 繰越需要とは、新型コロナによる人流抑制・移動制限(ロックダウンや緊急事態宣言)のために購買行動を控えていた消費者の需要が、規制解除とともに一気に回復することです。「リベンジ消費」と呼ぶ人もいます。

 日本人などに比べると、アメリカ人はショッピングが大好きです。季節は良くなり、ワクチン接種完了した人はマスクなしで外出できるようになった。消費意欲が大いに盛り上がっているわけです。コロナでステイホームしていた間に貯めこまれたお金が放たれようとしています。それを示すように米国では夏休みのシーズンの旅行予約が増えています。クルーズ観光会社は新しい客船を発注するなど強気。ドル箱のビジネス出張が一気に復活すると航空会社は期待しています。

 超インフレ時代がやってくるのか? 今のところその心配はあまりないようです。まず、CPIは、実際のインフレというよりも、去年が低かった分だけ今年が伸びているように見えるだけ。いわゆるベース効果です。もっとも、FRB(米連邦準備制度理事会)は、インフレは発生しないとは決して言っていません。インフレが急上昇する可能性は認めています。ただし、持続するものではなく1年後には落ち着いているという見解。

 人流抑制(ロックダウン)解除後の繰越需要が一巡して、新型コロナで寸断された世界のサプライチェーン(供給網)が再構築されたならば、原材料の品薄問題も解決するという予想です。だから、FRBは緩和縮小を慌てていない。

 サプライチェーンの修復は、ワクチン展開によって新型コロナが収束するという楽観的な前提に立っています。しかしインドや台湾では変異株の感染拡大で、供給が再び滞る懸念がでています。ベトナムではアップルの部品工場が一時閉鎖に追い込まれました。

 FRBの政策は「予測」ではなく「証拠」によって決定するとパウエル議長は述べています。FRBはインフレに対して先回りして利上げすることはしない、実際にインフレが2%以上に定着したことを確認して初めて政策を変更するという意味です。ただ、それでインフレが大人しくなるかはその時にならないとわからない。

 FRBはインフレのリスクをあまりに過小評価しているとの意見があることも事実。元米財務長官のサマーズ氏は、米経済のリスクは不況ではなく、資産インフレであり、FRBが危険なほど大きく出遅れる可能性が高いと批判しています。

出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成