日本の景気回復の遅れ、米景気過熱。2つの懸念が株の上値を抑えている

 米景気は好調で、コロナワクチンの接種が進む中、バイデン政権による1.9兆ドルの財政出動も行われることから、年後半には米景気が過熱する懸念すら出ています。

 日本はと言えば、ワクチン接種が遅れる中、コロナ変異種の感染拡大によって東京・大阪などで緊急事態宣言が延長され、景気回復が遅れる懸念が出ています。

 ただし、そのNYダウもここまで一本調子での株価上昇が続いたため、高値警戒感から少し調整色が出ています。NYダウが下がったので、日経平均にも一段と売り圧力がかかりました。

 米景気は好調です。米国株の不安は、年後半に「景気が過熱するリスク」が意識され始めたことです。景気回復の遅れが心配されている日本とは、逆の心配です。

 米景気が年後半に過熱してしまうと、インフレが進み、米金利が上昇します。そして、来年は過熱の反動で米景気が減速する懸念が生じます。

 米景気が、今年過熱して来年に失速するのか、あるいは、今年も来年もゆるやかな拡大が続くのか、そこを見極める必要があります。

日経平均、ここからどうなる?

 2つのシナリオが考えられます。

メイン・シナリオ

日本の景気・企業業績の回復が年後半にかけて鮮明になり、日経平均は再び上昇に転じて、年初来高値(2月16日の30,467円)を超えていく

リスク・シナリオ

日本の景気回復が遅れるうち、米景気は年後半にかけて過熱し、来年には過熱の反動で失速する。こうなると日経平均は、2万6,000円に向けて下げが続くことに

 私は、メイン・シナリオが実現すると予想しています。緊急事態宣言の延長があっても、日本の景気・企業業績の回復は続くと考えています。

 確かに、外食・観光・イベント・電鉄・航空業の業績低迷は長引きそうです。それでも、米景気・中国景気拡大の恩恵を受ける、自動車、機械、半導体など製造業の業績は一段と拡大すると思います。

 また、AI(人口知能)、IoT(モノのインターネット化)、5G(第5次移動体通信ネットワーク)を活用する第四次産業革命も世界的に加速し、企業業績を拡大させる要因になると考えています。

 そういう理由から、今期(2022年3月期)の東証一部の純利益は、前期(2021年3月期)比、約4割の増益になると予想しています。

 それを前提に、東証一部全体の割安度を測るPER(株価収益率)【注】を計算すると約「16.5倍」となります。

【注】PER(株価収益率:ピーイーアール、またはパーと読む)
株価の割安割高を判断する代表的指標の1つ。1株当たりの利益の何倍まで株価が買われているかを示す。単位は「倍」。倍率が低いほど株価は割安で、倍率が高いほど株価は割高と判断。世界の主要株価指標のPERは、歴史的にみておおむね10~20倍の範囲に収まってきた。

 PERが16.5倍であれば、東証一部の株価は平均値として「割安」と判断できます。今、予想に織り込んでいるのは、コロナの影響でサービス業の利益低迷が続く中での回復です。

 いずれコロナが完全に収束することまで見込むならば、サービス業の回復によって東証一部の利益はさらに増える余地があります。