トルコリラの「揺れる想い」

 トルコ中銀は先月3月18日の政策会合で、政策金利を17%から19%へ引き上げました。事前予想(18%)のさらに上をいくタカ派的利上げでしたが、市場は高評価で、トルコリラ/円は14円台前半から15円台まで上昇しました。

 ところが3月22日。トルコリラは東京市場がオープンすると同時に急落。トルコリラは対円で12.47円まで急落。その前の週末にエルドアン大統領がアーバル・トルコ中銀総裁を更迭したことが引き金となりました。

 エルドアン・トルコ大統領は(国民の受けが悪く支持率低下につながりかねない)利上げにかなりご不満だったようで、中銀総裁の首をすげ替えた。中銀総裁の更迭は過去2年弱で3度目。投資家がトルコ市場から逃げ出し、リラ安が底なし沼になるリスクは高まっています。市場関係者はトルコリラが史上最安値を更新するのは時間の問題、とみています。

 政治以外にもトルコリラ安の理由があります。まず米債券利回りが1年ぶりの水準まで上昇していることで、高金利リラの魅力が相対的に薄れていること。そして商品価格の上昇が、原油輸入国であるトルコ経済にダメージを与えていること。トルコリラ換算の原油価格は過去最高値を更新しました。

 FRBが米長期金利の上昇を押し戻そうとはせず「自動運転」に任せていること、また需要見通しの改善で原油価格の上昇基調が続きそうなことで、リラ下落に拍車をかけそうです。

 さらに、トルコにとって貴重な外貨獲得手段である観光産業が、コロナ(変異株)の感染拡大で立ち直りが遅れていることも懸念となっています。