インフレ圧力を無視できるか Under Pressure

 今夜はパウエルFRB議長の講演が予定されています。パウエル議長の慎重さは変わらないでしょうが、バーキン・リッチモンド連銀総裁のように強気な見解も出ていることに注意。

「米経済は回復基調にある」、しかし「緩和政策は継続する」。これがFRB(米連邦準備制度理事会)の公式見解です。米国の経済回復は緒に就いたばかりで、「目標とする水準が達成されるまでには時間がかかる」。したがって「緩和政策がしばらく必要」。マーケットに広がる利上げ前倒しの憶測を否定しました。

 FRBの重要な課題は、完全雇用とインフレ2%の達成。FRB(米連邦準備制度理事会)の政策は「予測」ではなく「証拠」によって決定するとパウエル議長は述べています。つまり、FRBはインフレの先回りをして利上げはしない。インフレが2%以上に定着したことを目で確認してから初めて政策を変更するということです。もっとも、FRBに対して「インフレ上昇を過小評価している」、「インフレ対策に決定的に出遅れるおそれがある」などといった批判もきかれます。

 なぜ、これほどまでに慎重なのか? FRBには、過去10年間インフレ目標を達成できなかったという黒歴史があるからです。FRBが求めているのは一時的な現象ではなく、「インフレ・ダイナミクスの真の改善」。今年の夏は物価が急上昇するかもしれない。しかし長期間低迷を続けたあとのインフレは厚い「お化粧」をしているので、慌てて飛びつくとひどい目にあう。FRBは今回こそは失敗できない、インフレを醸成する能力があることを証明してみせる必要があるのです。パウエル議長が慎重になっている理由です。