「A+M+E思考」の使い方

 AとMとEを具体的に考えることで、何を改善できるか。

 先ず、Eはリスクの拡大そのものなので、大まかにはEが持つリスク(標準偏差)を二乗した分散に反比例したウェイトで個々の銘柄をポートフォリオに組み込むといいことが言える。「値動きが激しい銘柄への投資ウェイトは小さい方がいい」という当たり前の話だが、「そのためには、分散投資の規模を拡げよう」と方針が決まるだろう。

 もちろん、銘柄間の相関関係も重要なのだが、先ずは個々の銘柄がどれくらいリスキーなのかを把握しておきたい。

 そして、最も有用なのは、Aの根拠を自問し、点検する考えを持つことだ。「なぜ、この銘柄を持つのか?」、「この銘柄は相対的にどの程度有望なのか(Aのプラス値は幾らか)?」と問うことはいいことだ。

 そして、もちろん、自分の判断したAと現実のAを対照して、自分の判断について振り返ることが参考になる。

 また、Aの現実的な大きさを思うときに、取引コストを下げようとの反省も生まれる余地があるだろう。プロの運用でもアクティブ・ファンドがインデックス・ファンドに勝てない大きな理由の1つは、前者がファンド内で払う取引コストが大きいからだ。直接的な手数料以外に、マーケット・インパクト(自分の売買で株価を不利な方向に動かすことで生じるコスト)の影響が大きい。

 また、個々の銘柄だけでなく、自分のポートフォリオ全体のA・M・Eがどうなっているのかも概算してみたい。

 具体的な数字を問い、実績と照らしてみると、「結局Mのメリットを長期的に取るのがいい」と気づく冷静な投資家もいるだろうし、現実的な制約の中で「Aの獲得にチャレンジしたい」と思う良い趣味の持ち主もいるだろう。

 筆者は両方の投資家を応援する。