Taxman

 イエレン財務長官は、米経済のために「大胆に行動する(Act Big)」が必要だと宣言しました。1.9兆ドルの大型景気刺激策を成立させたばかりのバイデン大統領は、休む間もなくインフラ整備と気候変動対策に2.25兆ドルを投資すると発表。

 1.9兆ドルの財源については米国債発行で賄うのですが、イエレン財務長官は「増税ではなく、速やかな経済成長によって」財政赤字は減らすことは可能と述べていました。しかし、さすがに追加の2.25兆ドルについては、法人税増税がセットになるようです。また支出は約8年間に渡って行われるため、即効的な成長効果は期待できません。その意味でこのインフラ投資は、景気刺激策というより資産の再配分と考えるべきかもしれません。

 法人税増税計画にともない、イエレン財務長官は、世界の法人税率引き下げ競争に終止符を打ち、世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけています。米国企業が税率の低い国へ本社を移転することを阻止する手段ともいえます。さすがアメリカ。自国の都合に合わせて世界の基準を変えさせるのです。

 コロナによるサプライチェーン(供給網)の崩壊によって、世界の貿易は、グローバル化からローカル化へ転換する方向へと動いています。バイデン大統領のインフラ投資計画にも、半導体を中国依存から脱却して米国生産を推進することが重点項目として盛り込まれています。ローカル化への構造転換が進めば、投資誘致のための法人税引き下げの必要性は薄れます。国際貿易における為替の重要性もまた低くなるでしょう。

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