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「米経済は回復基調にある」、しかし「緩和政策は継続する(利上げはしない)」。要約すると、これが現在のFOMC(米連邦市場委員会)の見解です。

 経済は回復に向かっているものの、「目標とする水準が達成されるまでには時間がかかる」として、「経済支援のために緩和政策を継続する」。つまり、今はまだ緩和縮小を考えていないということです。

 完全雇用とインフレ2%の達成がFRBの重要な課題。パウエル議長はFRB(米連邦準備制度理事会)の政策は「予測に基づく」のではなく、「実際の進展を見る必要がある」と述べています。

 バイデン政権の大型景気刺激策によってインフレ上昇が予想されるとしても、実際の証拠を確かめるまではFRBは動かない。先回りして緩和縮小を始めるなど、もっての外である。このFRBの姿勢に対してインフレ上昇を過小評価している、決定的に出遅れるなどといった批判もきかれます。

 なぜ、これほどまでに慎重なのか?FRBが自ら認めることはないでしょうが、FRBはインフレ政策に関して失敗を積み重ねてきました。過去10年間インフレ目標を達成できなかったという黒歴史があるのです。

 FRBが探しているのは一時的な現象ではなく、いわゆる「インフレ・ダイナミクスの真の改善」。今年の夏は物価が急上昇するかもしれない。しかし長期間低迷を続けたあとのインフレは「お化粧」をしていることが多いからすぐに飛びつくとひどい失敗をする。FRBは今回こそは失敗できない。インフレを醸成する能力があることを証明してみせる必要があるのです。パウエル議長が慎重になっている理由です。