自社株買いのメリット、おおまかな計算

 自社株買いを発表する企業が増えています。発表された自社株買いが、株主にどのくらいのメリットがあるか、おおよその見当をつける方法を、お教えします。

 発表された自社株買いが、すべて実行されるとした場合、発行済株式数が何%減るのか、見ると良いです。

 具体例を見てみましょう。以下は、2021年3月31日に発表された、第一生命HD(8750)の自社株買いの概要です。

  1. 取得する株式の種類:自社の普通株式
  2. 取得する株式の総数:170,000,000株(上限)(発行済株式総数に対する割合15.25%)
  3. 株式の取得価額の総額:2,000億円(上限)
  4. 取得期間:2021年4月1日から2022年3月31日
  5. 取得の方法:取引一任方式による市場買付

 ここで、一番注目していただきたいのは、赤い文字で記載したところ、「発行済株式総数に対する割合」です。15.25%となっています。上限株数を買い付けると、発行済株式総数が、15.25%減少します。ということは、1株当たり利益が、おおむね15.25%増えるわけです。

 つまり、PER(株価収益率)などの株価評価が変わらなければ、自社株買いで、1株当たり利益が15.25%増加し、株価が15.25%程度上がると期待することができるわけです。厳密に計算すると、もう少し異なる結果となりますが、ざっくりしたメリットの把握としては、上記でオーケーです。

 次に注目していただきたいのが、青い文字で記載した「取得期間」と「取得の方法」です。「2021年4月1日から2022年3月31日」まで、「市場買付」とされています。つまり、「1年かけて、市場でじっくり買っていく」ということです。

 この発表を受けて、翌営業日、4月1日の第一生命HD株は9.5%上昇しました。きわめて妥当な反応と思います。自社株を上限まで買うと考えるならば、+15.25%程度の上昇が期待できるわけですが、それをすぐにすべて織り込むわけにはいきません。

 というのは、自社株取得枠で表示される金額は、あくまでも上限であって、それを本当にすべて買うかわからないからです。1年かけてじっくり買うということで、短期的な株価変動を大きくしないように気をつけると考えられます。予定通り、上限まで買う企業が多いとはいえ、株価変動によっては未消化のまま残す企業もあります。どのように買っていくのか、途中経過も見ていきたいと思います。

 とりあえず、発行済株式数の15.25%を上限とする特大の自社株買い枠設定を好感して、第一生命HDの株価は翌日9.5%高と妥当な反応を示したと言えます。