要因2:ワクチン接種ペース

 バイデン大統領は5月1日までに全米の成人全員を接種対象にする目標を掲げていますが、さらに普及スピードを加速すると明言しました。その背景は、ここへきて米国で感染再拡大がみられ、米疾病対策センター(CDC)所長が、「急増している欧州と似た傾向をたどっている」と警告したことがあるようです。ワクチン接種ペースが速まっても、感染が再拡大すれば、経済規制に繋がるような動きとなり、経済の回復に水を差すことになります。ワクチン接種ペースと同時に感染拡大の動向にも注目しておく必要があります。

 ワクチン接種が先行する米国、英国などでは5月、6 月には完了のめどが付くと見られていますが、一方、欧州各国ではワクチン接種が遅れる中、新規感染者数が再び急増しており、接種完了前にもう一度景気減速が生じる可能性が出てきています。欧州は国によって規制強化と規制解除の動きが交錯していますが、方向は感染者拡大、ワクチン接種遅延、物価は上がるが景気回復は鈍い流れとなっており、ユーロの頭を押さえ込んでいる状況となっています。ユーロ/円も頭が重たくなれば、ドル/円の円安抑制要因になりそうです。

 欧州の悩みは日本においてもより切実なリスクとなりつつあります。ワクチン接種完了が主要先進国中で最も遅くなる見込みの中、緊急事態宣言を延長しても感染拡大を抑え込めていない政策、第4波の動きが出始めており、地方にも波及している中での聖火リレーなど日本のシステムの弱さ・甘さがぼろぼろと出始めて影響しているのではないか、そして円安の長期要因として働いてくるのではないかと気になるところです。このような体制下では景気に対しても徐々に影響が出てくるのではないかと懸念されるため、大企業・中小企業、製造業・サービス業を含めた足元の景況感を教えてくれる、4月1日公表予定の日銀短観に注目です。