数カ月単位で見れば、原油相場は強気と考える

 先週、原油相場はスエズ運河に関わる報道を一因として、日替わりで大幅上昇・大幅下落を繰り返しました。短期的にみれば、今後も刻々と変化する同報道を受けて、高い変動率を伴って上下する可能性があります。事態解決に時間がかかればかかるほど、生産地でのモノ余りと、消費地でのモノ不足が同時に深刻になるためです。

 一方、数カ月単位のレベルで原油相場の変動要因を俯瞰(ふかん)すれば、以下のようになると筆者は考えています。今回のスエズ運河の件(流通経路における障害)は、上昇要因および下落要因の一部であると言えます。

 全体的には、米国の原油生産量の回復が鈍いこと、OPECプラスが減産を実施していること(プラスの実態)、そして、株価が堅調推移していること、金融緩和が続いていること、ワクチン流通が拡大していること(プラスの思惑)などの上昇圧力が、マイナスの実態・思惑がもたらす下落圧力を相殺する状態が続くと考えられます。

 WTI原油は1バレルあたり60ドルの節目を下回ると、すぐさま反発する動きを繰り返しています。一定程度の底堅さを伴っているのは、上昇・下落、両方の圧力のうち、上昇が勝っているためだと、考えられます。

 短期的な今後の原油相場の動向については、前回の暴落するんじゃなかったのか?石油株と原油相場はなぜ騰がっている!?で述べたとおり、WTI原油(期近)で、1バレルあたり70ドルを付ける可能性があると、筆者は考えています。

図:足元の原油相場の変動要因
 

出所:筆者作成