インフレはコインの上で踊らない

 インフレのダイナミクス(力学)というものは、「10セント硬貨の上でくるりと回るよう(に素早く転換する)ものではない」とパウエルFRB議長は述べています。バイデン大統領は11日、1.9兆ドル規模の追加経済対策法案に署名して、米国では大型景気刺激策がいよいよ始動しますが、パウエル議長に言わせると「インフレに大きな変化をもたらすには、単発の景気刺激策では足りない。」

 なぜ、FRBはこれほどまでに慎重なのか?

 はっきりと認めてはいませんが、FRBはインフレ政策に関して失敗を積み重ねてきた苦い過去があるからす。過去10年間インフレ目標を達成できていないという事実は、FRB自身が一番よく認識しています。

 FRBが求めるのは、一過性の現象ではなく「インフレ・ダイナミクスの真の改善」。長期間低迷を続けたあとのインフレは「お化粧」をしている可能性があります。いくら美人に見えても飛びついてはいけない。表面上の経済データを信じて行動してはいけない。FRB は今回こそは失敗できない。インフレを醸成する能力があることを証明してみせる必要があるのです。パウエル議長が慎重になる理由です。

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