上がる(騰がる)ことだけが正義でない。“保有数量”が積立の重要テーマ
なぜ、10年後の価格が約4,500円の“低位からの反発”の評価額が、約7,500円の“高値維持”や約6,000円の“ジグザグ”に勝るのでしょうか。
それは、“数量”に着目することで説明できます。積立取引は、上下する“価格”のほか、これまでどれだけ数量を積み上げたか、つまり累積保有数量が最終的な損益を大きく左右するのです。評価額は以下で計算できます。
評価額=累積保有数量×価格
以下の図は、3パターンの累積保有数量の推移です。
図:上記3パターンの累積保有数量の推移 単位:グラム
10年後、累積保有数量が最も大きくなったのは、[3]の“低位から反発”(294グラム)でした。次点で[2]の“ジグザグ”(216グラム)、その後に[1]“高値維持”(152グラム)となりました。[3]の“低位から反発”が、[1]高値維持の2倍弱まで差が拡大したことが印象的です。
購入する金額が同じである場合(毎月1万円投資する場合、当月の営業日が22営業日だった場合、按分して生じる端数を上乗せした初日を除けば、次の営業日以降、毎営業日447円分を購入する)、価格が高い時に比べて、安い時の方が、購入できる数量は多くなります。
例えば、5年目の12月の月ごとの保有数量と価格(月間平均)は以下のとおりです。
表:上記3パターンの5年目の12月の月ごとの保有数量と価格(1グラムあたり)
5年目の12月 |
月ごとの保有数量 |
価格(月間平均) |
[1]高値維持 |
1.102 g |
8,923 円 |
[2] ジグザグ |
1.673 g |
5,876 円 |
[3] 低位から反発 |
3.199 g |
3,077 円 |
出所:筆者作成
最終的な価格は、[1]“高値維持”は約7,500円、[3]“低位からの反発”は約4,500円でした。最終的な価格に大きな差があっても、保有している数量が多ければ、不利にならないどころか、有利になるケースがあることがわかります。
また、保有している数量が多ければ、最終的な価格が積立開始時の価格よりも低くても、利益が出ることもわかります。これは、積立取引が持つ、通常の株式などの取引である一括取引(積立取引ではない取引)にはない、特徴です。
以下の図は、3パターンの月ごとの保有数量の推移です。
図:上記3パターンの月ごとの保有数量の推移 単位:グラム
[3]“低位から反発”は、価格の低迷時に、保有数量が目立って増加したことがわかります。[2]“ジグザグ”は、価格のジグザグ(山と谷)が正反対(谷と山)の形状になっています。[1]“高値維持”は、価格は高値を維持しましたが月ごとの保有数量は低迷しました。