中国当局の管理強化が企業成長を阻害する恐れも

 下図は中国企業のセクター分類と当局の管理度合いのざっくりとしたイメージです。上のセクターに行くほど国営企業が多く、当局の管理も強い傾向があります。反対に、下に行くほど民間企業が多く、当局の管理も緩くなる傾向があります。

■図:中国企業のセクター分類と当局の管理度合いのイメージ

出所:筆者作成

「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」をはじめ、急成長を遂げてきた中国企業の多くは比較的自由な環境でビジネスの幅を広げて、さまざまなイノベーションを生み出してきました。そして、規模の拡大に伴って、当局が管理を強める傾向がある分野に進出していったわけですが、ECサイトがビジネスの出発点だったアリババがアントグループを設立し、金融事業に乗り出したのもその一例といえます。

 各方面に進出して、影響力を強めていくアリババに対して当局が管理に乗り出したとすれば、これまでの自由なビジネス環境が損なわれてしまう恐れがあり、今後の成長が阻害されたり、対外的にも競争力の低下や政治的摩擦も生じやすく、実はこのアントグループの上場延期やその周辺で起こっている出来事は中期的なリスクにつながっている可能性があります。