中国株投資の注意点1:米国市場での上場廃止リスク

 例えば、阿里巴巴集団(アリババ)株は、米国市場(BABA)香港市場(09988)で取引が可能です。

 厳密には、「元々、米国市場に上場していたのが、香港市場でも取引できるようにした」と言った方が良いかもしれません。最近は、米国市場に上場している中国企業が香港市場や上海市場への回帰を志向する動きが出始めています。その背景にあるのは米中対立です。

 実際に今年(2021年)の1月、米国市場に上場していた、中国の通信関連企業(チャイナ・テレコム、チャイナ・モバイル、チャイナ・ユニコム香港)の3銘柄が上場廃止となりました。

 事の発端は、トランプ前米大統領が昨年(2020年)11月12日に、「中国人民解放軍と関係が深い企業への投資を禁止する」という大統領令に署名したことです。現在の米国はバイデン新政権へと移行しましたが、今後の米中関係の動向によっては、米国市場で取引できなくなることも想定し、香港や上海への上場を検討する中国企業があってもおかしくはありません。

 とはいえ、次々と米国市場で取引できなくなる銘柄が増え続けるというわけではなさそうです。

 もちろん、中国当局と関係が深く、人権や安全保障面で好ましくない銘柄は上場廃止の該当銘柄になる可能性はありますが、そもそも、中国企業にとって米国株市場に上場することは、米国の厳しい審査を通過したという企業への信頼性を高めるほか、成長企業株投資への文化が根付いている米国市場で上場することによる資金調達のしやすさ、そして、世界中の投資家が集う米国市場に上場することで企業の認知度向上につながるなど、多くのメリットがあり、今後も米国市場に上場する中国企業は増えてくると思われます。

 また、米大統領選後の昨年(2020年)12月に米議会で可決・成立した対中関連法案の中に、「外国企業説明責任法」というものがあります。この内容を簡単に説明すると、上場外国企業に情報公開を義務付け、3年連続で米当局の監査に応じない企業の証券取引を禁止および上場廃止させるというものです。

「やっぱり、上場廃止となる中国企業が増えるのでは」という印象を抱いてしまいがちですが、3年という時間的猶予があるため、その間に中国企業の情報開示の透明化が進めば良いわけですし、中国市場への複数上場も徐々に進んでいくと思われるため、急に上場廃止が決まって、対応に困るというケースは限定的になると思われますが、米国上場の中国株を取引する際には一応、覚えておきたいリスクです。