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ビーチ(B.E.A.C.H)から人がいなくなる日

 米国の雇用の回復は一様ではなく、先行きのある企業が採用を拡大する一方で、衰退に向かっている企業は生き残りをかけて大規模な人員カットを断行するか、規模を縮小するか、あるいは運命を受け入れ廃業の道を歩むかの選択を迫られています。

 ブッキング(Booking=予約)、 エンターテインメント(Entertainment=娯楽)、 エアー(Air=空旅)、 クルーズ(Cruise=船旅)、ホテル(Hotel=宿泊施設)など、いわゆるBEACHと呼ばれる業界では、特に新型コロナによる売上の落ち込みが深刻。雇用の構造変化が進むなかで、これらの仕事は消えてしまうリスクにさらされています。

 世界の観光業界全体では、すでに1億4,000万人以上が職を失い、観光業に携わる人の二人に一人が失業する日も近いと悲観的な予想もでています。もっともワクチンおかげで、英国では夏のバカンス予約が一杯になるという明るいニュースもあります。確かに個人旅行は今後回復が期待できるでしょう。しかし、航空会社にとってのドル箱であるビジネス客はどうか。ビデオ会議でほとんどの仕事ができることを確認した今、企業は、海外出張の必要性を感じるでしょうか。

 そして業種とは関係なく、低、高スキル労働者の雇用が増える一方で、中スキル労働者、いわゆるゼネラリストと呼ばれるサラリーマンが不要とされる時代がそこまでやってきています。もっとも暗い話ばかりではなく、米国、ヨーロッパや英国では、ロックダウンで外出を制限された若者達によって一大起業ブームが起きているそうです。ただ、雇用市場が構造変化に対応するにはまだしばらく時間がかかるわけで、それまでの間、政府は従来の失業対策によって支えるしかありません。皮肉なのは、政府の手厚い雇用対策がゾンビ企業を延命させることになり、結果としてゾンビ企業が新しい起業の成長を妨げていることです。

[動画で解説]ドル/円は110円を超えるか? 今夜、米雇用統計発表もあわせてご覧ください。