中国共産党の戦略や着眼点を知る

 これは、例えば今年でいえば、「第14次五カ年計画」や2035年までの中長期的目標の中で、中国が何を達成しようとしているのかが見えてきます。

「人民代表」は民主選挙によって選ばれているわけではなく、中国共産党は民主選挙で野党を打ち負かす必要もありません。党や国が崩壊しない限り、常に与党として君臨できるわけなので、常に選挙の圧力に見舞われる民主国家と比べて、中長期的な目標や戦略を制定、実践しやすいという特徴があります。

 また、「報告」の分量や文言から、例えば、「いま党指導部は台湾や香港といった辺境の問題にすごく神経を使っているな」といった、党にとっての課題も理解できます。

「政局」を読む

 全人代開催期間中、習近平(シー・ジンピン)総書記、李克強(リー・カーチャン)総理(以下、敬称略)をはじめとした国家指導者が一度に顔を見せることから、ここで政局を読み取ります。

 例えば、李克強が「報告」を読み上げる中で、顔が汗びっしょりとなることがありました。そういう光景から健康状態を探ったり、習近平との間に流れる空気感や距離から、「党指導部の団結力はどうなっているのか?」と考えることもあります。

 そして、出席しているべき政治局委員(トップ25)の誰かが欠席していれば、そこにも注意します。

 若干マニアックになりますが、私自身は、近年、王岐山(ワン・チーシャン)国家副主席の動向に注目してきました。

 2012~2017年の習近平第1次政権で、政治局常務委員(序列6位)として、習近平の反腐敗闘争を実際に統括した元国務院副総理の姚依林(ヤオ・イーリン)氏を義父に持つ大物政治家で、いわゆる「太子党」に数えられることもあります。その点で、習近平との「個人的関係」も焦点となることがあります。