ポイント7:政治

 冒頭でも言及しましたが、全人代とは「政治の祭典」であり、普段はベールに包まれた中国共産党政治の一端や一幕が可視化される場でもあります。指導者の健康状況、指導者同士の距離感、キーマンの出欠席など、今後の中国政治情勢を占う上で重要なパズルのピースが垣間見えることがあるのです。と同時に、中国は政治と経済、政府と市場の距離が独自に近いですから、「政治」の実態はマーケットの動向に大きく影響していくのです。

 前述した、習近平、李克強、王岐山の表情や動向には今年も注目します。と同時に、全人代期間中は、各地方自治体の代表団会議というものが開かれ、そこに、この3人を含めた指導者たちが顔を出すのですが、どこの省、より具体的には、誰が統括する省の会議に顔を出すかが重要だと思っています。党指導部として重視していない、あるいは警戒していない省の会議には原則、3人は顔を出しません。そして、そのプロセスは、習近平政権の「次」にも関係してくるのです。習近平の「後継者」が依然として明らかになっていない現状では、この手の観察と分析は、非常に難しいですが、なおさら重要になってきます。

ポイント8:最終日、李克強の記者会見

 全人代が閉幕する日、閉幕式後、国務院総理が恒例の記者会見を開きます。今年も李克強が臨む予定です。言うまでもなく、事前に質問事項は当局に伝えられ、当局が選定した質問にしか答えないのですが、李克強という政治家は、リップサービス、アドリブだったり、臨時的に追加質問を受け付けたり、現場での柔軟な対応やパフォーマンスという意味では、習近平よりも断然、上をいきます。

 当日の会見は人民大会堂から生中継で放送されますが、李克強の表情やしぐさ、口調や表現を注意深く観察していれば、例えば、経済政策や日中関係といったテーマにおいて、他ではお目にかかれないヒントや情報が示唆、暗示されることがあります。全人代が、最後の最後まで目が離せない所以(ゆえん)です。

 以上、全人代で注目すべきと私が考える8つのポイントを整理してみました。これらを念頭に、明日から全人代を観察してまいります。来週、再来週のレポートで、観察の経過や分析の結果を適宜報告していきたいと思います。