裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向

 詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。

 売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2021年2月5日(裁定売り残は2021年1月29日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 先週末(2021年1月29日)時点で、裁定売り残は1兆3,295億円もあります。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、それでも同日の裁定買い残4,526億円を大幅に上回る状況は変わりません。

 なお、投機筋(主に外国人)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げたままであることがわかります。

 注目いただきたいのは、上のグラフに、矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。3カ所あります。

 2019年10~12月と2020年6~8月、2020年11月~2021年1月です。日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が大きく減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたと考えられます。

 とは言え、投機筋のポジションは、トータルではまだ売り越しです。コロナ感染拡大によって、世界景気が二番底に向かい、日経平均が先行き下落することに、まだ期待を残していることになります。

日経平均先物・投機筋のポジション(イメージ図)

注:筆者作成

 投機筋はいったいいつまで、先物空売りをもって、我慢し続けるのでしょうか? あるいは、近々、投機筋の思惑通り、日経平均が急落するようなイベントが起こるのでしょうか?

 私の想定するメインシナリオでは、日経平均は年内に3万円まで上昇すると予想しています。私のメインシナリオ通りになるならば、投機筋はいずれ先物の買い戻しを迫られることになると、考えられます。

▼著者おすすめのバックナンバー
2020年2月4日:日銀の「ステルス・テーパリング」続く。中央銀行は最強のファンド・マネージャー?
2020年2月1日:日本株急落とロビンフッダー:ここは買い場?「宴の終わり」を判断する3つのシグナル
2020年1月28日:高配当バリュー株に積極投資するタイミングが訪れた!潮目は変わったと判断