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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日本株、再び高値圏でも投機筋は弱気 先物「空売り」いつまで持てる?

日経平均は再び高値に迫る。ワクチンへの期待続く

 2月第1週(2月1~5日)の日経平均株価は、1週間で1,115円上昇し、2万8,779円となりました。1月最終週(1月25~29日)に968円下がり、日経平均はしばらく調整入りかと見られましたが、すぐに急反発して年初来高値(1月25日の2万8,822円)に迫りつつあります。

 日経平均急反発を招いた要因として、以下3点、挙げられます。

【1】米国株が急反発、ナスダック総合指数が最高値を更新

 米国株が強かったので、日経平均もそれに連動しました。1月最終週に一時急落したナスダック総合指数は急反発し、史上最高値を更新。NYダウも急反発し、最高値に迫りつつあります。

日経平均・ナスダック総合指数・NYダウの動き比較:2019年末~2021年2月5日

注:2019年末を100として指数化 

 1月最終週に、ゲームストップ株乱高下【注】を嫌気して急落した米国株ですが、2月第1週にすぐ切り返しました。

【注】ゲ-ムストップ株乱高下
ロビンフッダー(売買手数料無料のロビンフッド証券などを使って短期トレードを繰り返す個人投資家の総称)と言われる個人投資家がSNSで声をかけあって、ヘッジファンドが空売りを積み上げているゲーム専門店「ゲームストップ」株に一斉に買いを入れました。
「機関投資家を打ち負かす」ことを目標とする個人投資家の買いで同社株は急騰、ヘッジファンドは巨額の損失を出して、買い戻しを迫られました。
ゲームストップ社は赤字が予想されており、ヘッジファンドは「株式価値に対して割高」と判断して空売りを積み上げていました。
ところが、そこにロビンフッダーがSNSで声をかけあって襲いかかりました。ヘッジファンドが巨額の損失を出して買い戻した後、ゲームストップ株は急落しました。

 米国株が強い背景には、米景気の回復期待が強いことがあります。米景気回復を示す指標発表が続いていることに加え、2月5日に米下院が2021年度予算議決案を可決したことも景気回復に追い風と見られています。上院でも可決されれば、バイデン政権が掲げる1.9兆ドル(約200兆円)の大型景気対策が実現するとの期待が高まりました。

日本企業の収益が回復。先物の「踏み上げ」も


【2】発表中の10-12月決算が好調

 発表中の日本企業の10-12月決算で、利益見通しを上方修正する企業が増えていることが好感されています。コロナのダメージが集中する外食・観光・航空・電鉄業などは不振でも、それ以外の産業は、総じて予想以上に収益回復が進んでいます。

 象徴的だったのは、ソニー(6758)です。2月4日に第3四半期(10-12月)決算を発表するとともに、通期(2021年3月期)の純利益見通しを、8,000億円から1兆850億円に上方修正しました。

 コロナ禍でも過去最高益を更新し、純利益を1兆円の大台に乗せる見通しとなったのは、巣ごもり消費で、ゲームが好調だったことだけが理由ではありません。

「鬼滅の刃」のヒットに恵まれた映画・音楽部門、テレビおよびデジタルカメラの製品ミックス改善などが寄与したエレクトロニクス部門、運用損益増加が寄与する金融部門が好調です。

 唯一、半導体部門だけは減益となる見込みです。米国の制裁を受ける中国企業向けの売上が低下するためです。ただし、足元、半導体事業の業績も改善に向かっています。

ソニーの株価(月次推移):1981年1月~2021年2月(日)

 1980年台、製造業が世界経済の中心であった時、ソニーは製造業の雄として世界のトップに上り詰めました。ところが21世紀に入り、製造業では稼げない時代となり、ITが経済の中心になると、ソニーは一時凋落しました。

 ただし、そこからソニーの復活が始まりました。ハード(製造業)で稼ぐ製造業から、ビジネスモデルを完全に転換しました。

 ITを駆使して稼ぐ総合エンターテインメント企業として、再び世界のトップに上りつつあります。製造業(エレクトロニクス・半導体)でも利益を出していますが、利益成長の中心は、ゲーム・映画・音楽・金融などに移っています。

 日本の製造業に、ITを駆使した構造改革で復活の兆しが出つつあることが、日本株が見直される要因となっています。

【3】日経平均先物の「踏み上げ」が続いていると推定される

 東京証券取引所が発表している「裁定売り残高」の推移を見ると、投機筋(主に外国人投資家)が、日経平均先物の売り建てを積み上げたままであることがわかります。

 じりじりと上昇を続ける日経平均を見て、先物の空売りを積み上げてきた投機筋が、損失拡大を避けるための、日経平均先物の買い戻しを迫られていることがわかります。

 日経平均が下落すると予想して、日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られることを、「踏み上げ」と言います。

外国人投資家によって動く日経平均

 以下のグラフを見ればわかる通り、日経平均は外国人投資家の売買で動いています。

日経平均と外国人の売買動向(買越または売越額、株式現物と日経平均先物の合計):2020年1月6日~2021年2月5日(外国人売買動向は2020年1月29日まで)

出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成
注:外国人売買で、棒グラフが上(プラス方向)に伸びているのは買越、下(マイナス方向)に伸びているのは売越を示す

 このように外国人が日本株を動かす状態が、30年間も続いています。つまり1990年以降、日本株は外国人が動かすようになりました。

 その外国人は、昨年は10月まで日本株を大幅に売り越していました。株式現物だけでなく、日経平均先物の売り建ても積み上げていました。

 ところが、世界景気に回復期待が出てきたことを受け、昨年11月から日本株を大量に買い越すようになりました。それが、11月からの日経平均上昇の原動力となりました。

 その外国人の買い越しですが、12月から徐々に減少し、1月後半は売り越しに転じていました。外国人の買いが減り、日経平均がスピード調整に入ると考えられた矢先、2月の第1週の日経平均は再び大幅高となりました。

 まだ、2月の売買統計は発表されていませんが、外国人の先物買いが出たのではないかと、推定しています。

裁定売り残に表れる、投機筋の日経平均先物「空売り」の動向

 詳しく説明すると難解になるので、説明は割愛して結論だけ述べます。東京証券取引所が発表している「裁定売り残」の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れます。

 売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。以下をご覧ください。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2021年2月5日(裁定売り残は2021年1月29日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 先週末(2021年1月29日)時点で、裁定売り残は1兆3,295億円もあります。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、それでも同日の裁定買い残4,526億円を大幅に上回る状況は変わりません。

 なお、投機筋(主に外国人)が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げたままであることがわかります。

 注目いただきたいのは、上のグラフに、矢印を書き込み「踏み上げ」と書いてあるところです。3カ所あります。

 2019年10~12月と2020年6~8月、2020年11月~2021年1月です。日経平均が大きく上昇した後、裁定売り残高が大きく減少しています。ここで、「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために先物の買い戻しを迫られたと考えられます。

 とは言え、投機筋のポジションは、トータルではまだ売り越しです。コロナ感染拡大によって、世界景気が二番底に向かい、日経平均が先行き下落することに、まだ期待を残していることになります。

日経平均先物・投機筋のポジション(イメージ図)

注:筆者作成

 投機筋はいったいいつまで、先物空売りをもって、我慢し続けるのでしょうか? あるいは、近々、投機筋の思惑通り、日経平均が急落するようなイベントが起こるのでしょうか?

 私の想定するメインシナリオでは、日経平均は年内に3万円まで上昇すると予想しています。私のメインシナリオ通りになるならば、投機筋はいずれ先物の買い戻しを迫られることになると、考えられます。

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