日本企業の収益が回復。先物の「踏み上げ」も


【2】発表中の10-12月決算が好調

 発表中の日本企業の10-12月決算で、利益見通しを上方修正する企業が増えていることが好感されています。コロナのダメージが集中する外食・観光・航空・電鉄業などは不振でも、それ以外の産業は、総じて予想以上に収益回復が進んでいます。

 象徴的だったのは、ソニー(6758)です。2月4日に第3四半期(10-12月)決算を発表するとともに、通期(2021年3月期)の純利益見通しを、8,000億円から1兆850億円に上方修正しました。

 コロナ禍でも過去最高益を更新し、純利益を1兆円の大台に乗せる見通しとなったのは、巣ごもり消費で、ゲームが好調だったことだけが理由ではありません。

「鬼滅の刃」のヒットに恵まれた映画・音楽部門、テレビおよびデジタルカメラの製品ミックス改善などが寄与したエレクトロニクス部門、運用損益増加が寄与する金融部門が好調です。

 唯一、半導体部門だけは減益となる見込みです。米国の制裁を受ける中国企業向けの売上が低下するためです。ただし、足元、半導体事業の業績も改善に向かっています。

ソニーの株価(月次推移):1981年1月~2021年2月(日)

 1980年台、製造業が世界経済の中心であった時、ソニーは製造業の雄として世界のトップに上り詰めました。ところが21世紀に入り、製造業では稼げない時代となり、ITが経済の中心になると、ソニーは一時凋落しました。

 ただし、そこからソニーの復活が始まりました。ハード(製造業)で稼ぐ製造業から、ビジネスモデルを完全に転換しました。

 ITを駆使して稼ぐ総合エンターテインメント企業として、再び世界のトップに上りつつあります。製造業(エレクトロニクス・半導体)でも利益を出していますが、利益成長の中心は、ゲーム・映画・音楽・金融などに移っています。

 日本の製造業に、ITを駆使した構造改革で復活の兆しが出つつあることが、日本株が見直される要因となっています。

【3】日経平均先物の「踏み上げ」が続いていると推定される

 東京証券取引所が発表している「裁定売り残高」の推移を見ると、投機筋(主に外国人投資家)が、日経平均先物の売り建てを積み上げたままであることがわかります。

 じりじりと上昇を続ける日経平均を見て、先物の空売りを積み上げてきた投機筋が、損失拡大を避けるための、日経平均先物の買い戻しを迫られていることがわかります。

 日経平均が下落すると予想して、日経平均先物の売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していく中で、損失拡大を防ぐために日経平均先物の買い戻しを迫られることを、「踏み上げ」と言います。