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銀行セクターの近況
広瀬 隆雄
わかりやすいグローバル投資レポート
グローバル投資に精通する広瀬隆雄氏に、新興国株式だけでなく、米国株、欧州株をはじめとする先進国株式など、海外全般の経済や投資ストラテジーをご紹介いただきます。

銀行セクターの近況

2017/1/19
第4四半期中に米国での大統領選挙が行われ、それに前後して米国財務省証券が売られたほか、ドル高、株高になりました。また原油価格はOPECの減産合意で上昇しました。
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【今日のまとめ】

  • 銀行セクターの第4四半期決算が出揃った
  • JPモルガン・チェースはオールラウンドに強い
  • シティグループはメキシコ事業が曲がり角に来ている
  • ウエルズファーゴは純金利マージンの拡大が見られた
  • バンク・オブ・アメリカは今後の純金利マージン拡大に楽観的
  • ゴールドマン・サックスはマーケットメーキングを伸ばす余力がある
  • モルガン・スタンレーは債券部が予想外の好成績を出した

第4四半期決算が出揃った

銀行株の第4四半期決算が出揃いました。

第4四半期中に米国での大統領選挙が行われ、それに前後して米国財務省証券が売られたほか、ドル高、株高になりました。また原油価格はOPECの減産合意で上昇しました。

このようなマーケットの動きが機関投資家のトレーディングを活発化した結果、各行ともトレーディング収入は好調でした。

その反面、長短金利差は拡大する兆しを見せているものの、まだそれほどスプレッドは広がっていません。

スプレッドの拡大で恩恵を受けるのは新規の融資だけなので、ウエルズファーゴを除き、未だ純金利マージンの拡大は見られませんでした。

このため各行の売上の増加は、おもに融資残高増から発生しています。

次に純利益では、ウエルズファーゴを除く各行が増益でした。

株主資本利益率(ROE)ではゴールドマン・サックスの伸びが著しかったです。

またメガバンクの中ではJPモルガン・チェースのROEがウエルズファーゴを上回りました。

去年までのデフレ環境は、銀行にとって厳しい経営環境でした。しかしトランプ新大統領の誕生で、GDP成長は加速することが予想されますし、インフレにも弾みがつくと思われます。

銀行の顧客は、そのように経済の大前提が変化しはじめる局面では、資本政策の変更や、ポートフォリオの入れ替えを急ぎます。それは銀行の収益にとって好環境です。したがって2017年は基本的に銀行株にはフォローの風が吹いていると考えて良いでしょう。

JPモルガン・チェース

JPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)の第4四半期決算は、EPSが予想$1.42に対し$1.71、売上高が予想234.8億ドルに対し234億ドルでした。売上高成長率は前年比+2.1%でした。なお第4四半期の決算は4.75億ドル(=13¢)のタックス・ベネフィットを含んでいます。

純金利収入は、融資残高成長と金利上昇により前年比+5%の121億ドルでした。

第4四半期の株主資本利益率(ROE)は11%でした。

貸倒引当金は前期比-13億ドルの8.64億ドルでした。コンシュマー部門とホールセール部門の両方で合計4億ドルの引当金解除を行いました。

コンシュマー部門では住宅ローン市場における信用改善が見られました。その反面、クレジットカード部門での信用の状況は引き続き劣化しています。これはある程度、意図的にやっていることです。それというのもJPモルガン・チェースは去年の後半にクレジットカードの電算システムをアップグレードし、それを武器にクレジットカード市場でマーケットシェアUPを狙っているからです。

次にホールセール部門に目を転ずると、石油&天然ガス向け、ならびに金属鉱業向け貸付において信用の改善が見られました。

平均コア融資は+14%でした。平均預金残高は+11%の6,070億ドルでした。クレジットカード売上ボリューム成長率は+14%でした。マーチャント・プロセス・ボリュームは+10%でした。

投資銀行部門売上高は14.9億ドルでした。これは予想より若干悪かったです。債券部は+31%、株式部は+8%でした。

一株当たりブックバリューは+6%の$64.05でした。一株当たりタンジブル・ブックバリューは+7%の$51.44でした。

ジェイミー・ダイモンCEOは「米国経済のモメンタムは強まっている。米国が健全で合理的で思慮深い政策を採用する可能性が強まっている。それは成長を加速させ、幅広い所得層に渡って新規の雇用を創出すると思われる。JPモルガン・チェースもその中で一役買うことが出来る良い立場に立っている」とコメントしています。

2017年第1四半期の純金利収入は前期比微増を見込んでいます。

JPモルガン・チェースには他行に比べて著しく見劣りする部門は皆無で、オールラウンドに強いと思います。

シティグループ

シティグループ(ティッカーシンボル:C)が第4四半期決算を発表しました。EPSは予想$1.12に対し$1.14、売上高は予想172.6億ドルに対し170.1億ドルでした。売上高成長率は前年比-8%でした。

グローバル・コンシュマー・バンキング部門売上高は+2%の80億ドルでした。北米が+5%で全体をけん引しました。営業費用は前年比±0%の44億ドルでした。為替要因を除いた営業費用は+3%でした。コストコの融資ポートフォリオを買収したことが、営業費用が増えた主な原因です。当面の間、コストコから買収したビジネスは先行投資を必要とし、収益への寄与はしばらく先になると思われます。

シティグループはメキシコにシティグループ・バナメックスという商業銀行を持っています。これはメキシコではトップクラスの銀行で、シティクループはメキシコの事業にとても肩入れしています。しかしドナルド・トランプは保護貿易主義を打ち出しており、それにより一番、悪影響を受けるのはどうやらメキシコになりそうです。このためシティグループの戦略には懐疑的な投資家も多いです。

一方、インスティチューショナル・クライアント・グループ部門売上高は+11%の83億ドルでした。うちマーケッツ&セキュリティー・サービス部門は+24%でした。

バンキング売上高は+1%の43億ドルでした。アドバイザリー売上高は-2%の2.96億ドルでした。債券引受フィーは+4%の6.48億ドルでした。株式引受けフィーは-8%の1.9億ドルでした。債券部門売上高は+36%の30億ドルでした。顧客の売買活動の活発化とスプレッド取引のマージン拡大が寄与しました。株式部門売上高は+15%の6.94億ドルでした。デリバティブの好調が寄与しました。

ウエルズファーゴ

ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の第4四半期決算はEPSが予想$1.00に対し96¢、売上高が予想223億ドルに対し216億ドルでした。売上高成長率は前年比±0%でした。

純金利収入は+7%の124億ドルでした。総資産利益率は1.08%でした。株主資本利益率(ROE)は10.94%でした。

融資残高は前年比+6%の9,641億ドルでした。預金残高は前年比+6%の1.3兆ドルでした。貸倒引当金は前年比-3%の8.05億ドルでした。

純金利マージンは5ベーシスポイント改善し2.87%でした。大手銀行の中でいちはやく純金利マージンの改善が顕著に見られた点は注目できると思います。

一株当たりブックバリューは-2%の$35.18でした。一株当たりタンジブル・ブックバリューは-2%の$29.25でした。

ウエルズファーゴは不正口座開設問題を是正するため、新しいパフォーマンス評価システムを発表しました。

そこでは先ず数値による営業目標を一切廃止しました。そしてカスタマー・フィードバックを個々の行員の成績評価の中心に据えました。

今後は、顧客サービス、得意顧客との関係強化、リスク・マネージメントなどを基準にボーナスを決める方針です。

また行員の士気を上げるため、賃金を+12%引き上げました。行員の初任時間給は地域により$13.50~$17.00とまちまちですが、これらは全国最低賃金$7.25を上回る水準です。

バンク・オブ・アメリカ

バンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)の第4四半期決算ではEPSが予想38¢に対し40¢、売上高が予想210.6億ドルに対し199.9億ドルでした。売上高成長率は前年比+2.1%でした。

純金利収入は前年比+6%の103億ドルでした。金利の上昇、融資残高が伸びたことが原因です。

非金利収入は-2%の97億ドルでした。

消費者向けバンキングの融資残高は前年比+8%の181億ドルでした。

グローバル・バンキングの融資残高は前年比+6%の191億ドルでした。

市場部門では、セールス&トレーディング収入が28億ドルでした。これは予想より若干低い数字でした。うちDVA(Debit Valuation Adjustment)は1.01億ドルでした。

DVAを除くとセールス&トレーデンングは前年比+11%、うち債券部は+12%、株式部は+7%でした。

総資産利益率(ROA)は0.85%でした。株主資本利益率(ROE)は7.0%、RoTCEは9.9%でした。

バンク・オブ・アメリカの一株当たりブックバリューは+7%の$24.04。

経営陣のコメントとしては「最近の金利上昇は第4四半期の決算に影響を与えるには遅すぎた。しかし2017年第1四半期の純金利収入はかなり増えると見込んでいる」とのことです。

バンク・オブ・アメリカは2017年上半期の自社株買戻しを18億ドル積み増し、43億ドルとします。

ゴールドマン・サックス

ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)の第4四半期決算はEPSが予想$4.80に対し$5.08、売上高が予想78億ドルに対し81.7億ドルでした。

インベストメント・バンキング部門の売上高は前年比-4%の14.9億ドルでした。アドバイザリー売上高は前年比-19%の7.09億ドルでした。引受フィーは+16%の7.77億ドルでした。債券引受が好調でした。

インスティチューショナル・クライアント・サービス部門売上高は+25%の36億ドルでした。うち債券部は+78%の20億ドルでした。なお債券部は去年低調だったので前年比較が容易でした。株式部は-9%の15.9億ドルでした。現物株の執行が低調でした。

インベスティング&レンディング部門は+15%の14.8億ドルでした。純金利収入の増加が寄与しました。

運用部門は+3%の16.1億ドルでした。

株主資本利益率は11.4%でした。

ゴールドマン・サックスのバランスシートは強く、ポジションを取る余力があります。このことはマーケットのボラティリティが上昇し、機関投資家の活動が活発化した際、ゴールドマンが積極的にリスクを取りながらマーケットメーキングすることで収益ならびにマーケットシェアを伸ばすことが出来ることを意味します。

モルガン・スタンレー

モルガン・スタンレー(ティッカーシンボル:MS)の第4四半期決算発表はEPSが予想65¢に対し81¢、売上高が予想85.1億ドルに対し90.2億ドルでした。

インスティチューショナル・セキュリティーズ部門の税引き前利益は13億ドル、売上高は46億ドルでした。

うちセールス&トレーディング売上高は32億ドルでした。

そのうち株式セールス&トレーディングは20億ドルでした。ちなみに前年同期は18億ドルでした。一方、債券セールス&トレーディングは15億ドルでした。ちなみに前年同期は5.5億ドルでした。債券部は事業を縮小しているにもかかわらず絶好調で、意外に思った投資家が多かったです。

ウエルス・マネージメント部門の税引き前利益は8.91億ドル、売上高は40億ドルでした。

ちなみに前年同期は税引き前利益7.68億ドル、売上高38億ドルでした。

運用部門の税引き前利益は2,800万ドルでした。売上高は5億ドルでした。ちなみに前年同期は税引き前利益1.23億ドル、売上高6.21億ドルでした。

株主資本利益率(ROE)は8.7%で、これは前期と同じでした。一株当たりブックバリューは$36.99、タンジブル・ブックバリューは$31.98でした。

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