高い流通コストと環境問題

【2】流通コストが極めて高い問題

 自然エネルギーによる発電コストはどんどん低下し、発電コストだけで見ると、今や競争力のある電源となりつつあります。ところが、流通コストがきわめて高い問題が残っています。流通コストまで含めて低コストとならなければ、化石燃料を本格的に代替することはできません。

 もし太陽光パネルをアフリカの砂漠に大量に敷き詰めれば、低コストの電気が大量に得られます。ところが、それを使う術がありません。作られた電気を都市部に運ぶのに莫大なコストがかかるからです。

 仮に、送電線網を張り巡らせて、砂漠の電気を都市まで持ってきても、需給調整がうまくいきません。電気は保存ができない(蓄電池で保存できる量は限られる)ので、発電と電力消費を常に同時同量としなければならない問題があります。需給調整に失敗すると、しばしば停電する問題に苦しめられます。

 これを解決するのが、水素の活用と考えられています。自然エネルギーで作る電気で水を電気分解して得られる水素を、運搬・保存する方法です。電気が必要になれば、貯蔵してある水素を燃やして発電すれば良く、排出されるのは水だけです。

 水素エネルギー活用については、別の機会にさらに詳しく解説します。

【3】環境問題

 持続可能なエネルギー循環社会を作るために進める自然エネルギーの活用ですが、皮肉なことに、必ず環境問題に突き当たります。

 風力発電には、重低音公害の問題があります。洋上風力も、漁業資源への悪影響が心配されます。地熱発電も、高温岩体発電も、地盤沈下や地下水への悪影響などの環境問題をクリアできないと前へ進めません。

 自然エネルギーで発電を行う地域として人口過疎地が選ばれることが多いが、それでも人がまったく住んでいない場所は、地球上にありません。自然エネルギーの活用は、環境問題をクリアしながら進めることが求められます。